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メインの小籠包を食べ終わるとデザートを持って来てくれた。
セットの杏仁豆腐なのでそこまでは期待していなかったけれどスプーンですくって口に運ぶととても柔らかくてクリーミーで予想を上回る程の味に驚いた。
二人でこの間食べたわらび餅に少し近い食感の様な気がした。
そんな風に思っていると神谷さんもわらび餅の事を私に話してきた。
ここのこの杏仁豆腐だけを食べにまた来たいと思っている私の気持ち迄ももしかしたら神谷さんは既に分かっているのかもしれないと思った。
二人の手は止まらず小さな硝子の器はあっという間に空になった。
お腹も満たされ私が会計をしてその際に割引き券を二枚もらった。
店の外に居る神谷さんに一枚渡す。
「また高井さんと来ないと。楽しみ増えた。」
「はい。今度はお得に食べられますね。」
「それもそうだけど…あぁ、うん、だね。小籠包前よりも好きになったわ俺。」
「あはは。」
神谷さんは私と同じ小籠包男子になりそうだ。
神谷さんが車で来ていたので私達は駐車場に向かった。
私は内心電車で帰りたかったのだが神谷さんの誘いを断り切れなくて家迄送られる事に。
さっきは買い物をしたり食事をしたりして会話も弾みそういうムードにはならなかったけれど車内のあの空間が一気に気まずさを醸し出す気がして。
バタン。
車の扉を締めシートベルトを差し込んだその時。
視界の横から神谷さんがぶら下げていた紙袋を私の目の前に差し出してきた。
?…。
置く場所が無いから私に持っていて欲しいのかと思い両手でそれを受け取った。
「高井さんにプレゼント。」
一言そう言われた。
私は思わず受け取ってしまったこれを慌てて神谷さんに返そうとした。
それは良く見るとさっき見て回った時計コーナーのショップ名が印刷された紙袋だったから。
私が店員さんにつけてもらった時、神谷さん自身が私に本当に良く似合っていたからと内緒で買ってくれた様だった。
けれど時計なんて高価な物頂けない。
さっき値段は見なかったから分からないけれどでも一流ブランドで無いにしてもきっとそれなりにはするはず。
私が神谷さんに戻した紙袋を笑いながら私にまた返す。
「安心して。俺はそのペアの片割れはまだ買って無いから。そこまで高くも無かったしファッションの一部として楽しみながら使ってよ。あきたら友達に譲って良いからさ。」
そんな…譲ってなんて。
それにまだ私は神谷さんの彼女でもないのに。
これをもらったらそういう事が成立してしまうみたいで気持ちが簡単にはいかない。
「…あの、、」
「じゃっ、出発するよ。」
はっきりしない私は神谷さんのペースにのまれてしまう。
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