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episode 6
俺は大学から駅に向かって少し早足で歩いていた。
先生に明日の講義の件で呼び止められ話し込んでしまい出るのが遅くなってしまった。
今日はこの後また橋本と会う約束をしているが間に合いそうにない。
駅に着き人混みをすり抜けるように改札を通りホームの上で橋本にメッセージを送った。
橋本とここ最近俺は良く会う約束をしていた。
どちらかと言うと俺からではなく橋本の方からの連絡が多かった。
お互い勉強やら就活やらで日々忙しい中こうして時間をとって会う事に橋本はどう思っているのか。
電話やメッセージで済ませても良いと俺は思うのだがきちんと顔を見て話したいと橋本はいつもそうやって約束をしたがる。
なので俺も時間を見つけては無理の無い程度に会う様になっていた今日この頃。
電車を降りて待ち合わせの改札に急いで行くと誰かと電話している橋本の姿が目に入ってきた。
橋本の方へ近付いて行くと俺に気付いた橋本が大きい声で名前を呼ぶ。
「ごめん橋本。先生に捕まっちゃって。」
右手を顔の前に持っていきすまんすまんとやって見せる。
「何だ、そう言うことならメッセージ入れてくれたら心配しなかったのに。」
「えっ、俺電車乗る前にメッセージ入れたんだけど見てない?」
「そうなの?私のスマホには入って来て無いけ…あっ、あ~今入って来た。最近通知がなかなか届かない時があって。ごめん拓。」
「なる程ね。だったらしょうが無いか。でも結果的に俺は遅れた訳だしコーヒー奢る。」
「あはは。さっきそんな話を美羽としてたんだよね。では遠慮なく。」
「さっき美羽と電話してたの?」
「うん。拓が時間過ぎても来ないから心配になって美羽に連絡入れたの。」
「そう…。」
「あ…言わない方が良かった?今日会う事。」
「いや…別に。行こうぜ。」
「うん…。」
一瞬俺の様子が変わったのを橋本は勘づいた様だった。
橋本と二人で会っている事は美羽も知っているし今更また二人で会うと美羽が聞いても何も思わないのだろう。
だけどもし美羽がほんの少しでも心が動いて俺に嫉妬心を抱いてくれたのなら…。
俺は何より幸せだと思えるのに─────
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