episode 6

2/16
前へ
/174ページ
次へ
喫茶店に入り俺は橋本にカフェラテを御馳走して席まで運ぶと橋本が男性と話をしていた。 席に近付いていくとその男性は俺を見るなり軽く会釈をして去って行った。 カフェラテ二つをテーブルに置き目の前へ差し出すと苦笑いを浮かべている橋本が居た。 知り合いか何かだと思い尋ねると俺が注文している間に突然声を掛けられたんだそうだ。 橋本はこういったナンパの対処法があまり分からず最近頻繁に声を掛けられるのだが毎回困ってササッと逃げる様にしてその場から離れて行くとの事だった。 周りがほっとけない位綺麗になって橋本も隅に置けないとカフェラテをスプーンでかき混ぜながら羨ましそうに呟いた。 すると橋本も俺に。 「拓だって女の子の方から声掛けられた事位あるでしょ?それだけの顔してたら。いわゆる逆ナンってやつ。」 確かに無くは無かった。 でも人生で一度だけ。 大学の正門で体のあちこちに傷を付けた亜由美が初対面の俺に声を掛けてきた。 ──────────。 「あの…あっ、こんにちは。はじめまして。同じ大学の佐藤亜由美って言います。実は前からお友達になりたくて今度私と遊んでくれませんか?」 髪の色は明るめの茶色で全体にカールがかっておりぱっちりとした目元には眩しい位のラメのシャドウがのせられていた。 家の大学にこんなギャルな子が居たのかと思わず身なりの派手な亜由美に見入ってしまった。 けれど顎に擦り傷があり少し血も滲んでいる。 良く見ると膝や手からも擦り傷から血が滲んでいるし着ているヒラヒラした洋服もなんだか汚れている様に見えた。 「ってか…顔とか膝とか…どうしたの?」 俺は自分の顔を手で指差しながら亜由美に言った。 「えへへ。実は貴方に今日は絶対声掛けようって意気込んでいたら力入り過ぎてそこでスッ転んじゃって…あぁ…ジンジンしてきた。」 「そっ、そうだったんだ…あ、ちょっと待ってて。」 ズボンのポケットからティッシュを取り出し二、三枚掴んで膝に当てる。 もう一枚取り出して顎を押さえる様に渡すと手と手が触れた。 「あ…りがとう。」 顔をピンク色に染めながら恥ずかしそうに笑う。 へぇ…ギャルも笑うと普通の女の子に見えるもんなんだな。 「所で佐藤さん学部どこ?」 膝にティッシュを当てたままの状態で下から見上げる様にして聞く。 「教育学部です。」 教育学部!? 心の中で絶叫した。 ギャルが先生にでもなるのかと。 ま、まぁ外見は関係無いか。 すると顎に当てていたティッシュを離した亜由美が俺に。 「あの。良かったら連絡先交換してもらえませんか?」 そんなこんなで俺と亜由美の関係は始まった。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

243人が本棚に入れています
本棚に追加