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「今晩は。おっ、似合ってるねその格好。」
「神谷さんっ!」
ショーケースの拭き掃除をしていた私は神谷さんの声に驚いた。
まさか本当に来店してくれるとは思っていなかったから。
確か神谷さんの今日の予定には午後は外出とホワイトボードに書いてあったな。
「神谷さん直帰だったんですか?」
「そう。オーナーさんと打ち合わせ早く終わったから来ちゃった…しかしどれも美味そうだね。食べなくてもなんか分かる。」
私達の話し声に気付いて奥からおじさんが神谷さんにペコリと挨拶をしてくれた。
すると折りたたみ椅子を脇に抱えて神谷さんに出してくれた。
「ゆっくりしていって下さいね。」
一言そう言うとおじさんは明日の仕込みをする為また奥に戻って行った。
出された椅子に腰掛けながら神谷さんはケーキを三つ注文して私はせっせと箱に詰めていく。
神谷さんが注文したケーキは全てチョコ系のケーキで思わずクスッと笑ってしまう。
私は詰め終わった箱の中身を見せて間違えが無いか神谷さんに見てもらう。
「こちらでお間違え無いですか?」
「はい。お間違え御座いません。真っ茶色のチョコ尽くしの俺の夜食。」
「あはは。夜食ってこれ一晩で食べるつもりなんですか?」
「そうだよ。」
「カロリー相当高いですけど…。」
「大丈夫。ジム行ってるから俺。腹筋割れてるよ。」
「凄い!神谷さんマッチョだったんですね。」
そんな会話を楽しみながら神谷さんはお会計を済ませショーケース越しにケーキを受け取ろうとしたその時二階から階段を下りてくる足音が複数聞こえて来た。
下りれば店へと続くその階段に私も神谷さんも目を向けた。
一花だよね…友達と一緒なのかな?
深く考えもせずに下りてくるのを待っていると先に見えてきたのはやはり一花でその後ろからは…拓…。
一花は私達が目に入ると私に軽く手を振り次に神谷さんにニコニコしながら挨拶をする。
「神谷さんっ!来てくれたんですか!本当に買いに来てくれるなんて嬉しいです…えっ、来たばかりですか?」
「あ、うん、そうだよ。この前はどうも。」
「神谷さんスーツ姿だ。背もあるし似合いますね!」
「どうもありがとう。」
「所でケーキ何買ったんですか~…。」
一花は神谷さんが来てくれてかなり嬉しいのか話が止まらず私と拓は取り残されてしまっていた。
そんな拓は私と目を合わせ様とはしてくれず怪訝な顔で会話の弾む二人の方ばかりを見ている。
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