episode 6

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私は拓にここでバイトをする事を直接話さなかったからもし知らなかったのならそういう事なんだと分かってもらえたはず。 でもそれよりも私は拓が一花の部屋に二人きりになる関係にまで発展していたのかと思うとそれを受け止めるのがやっとだった。 「あ、それより神谷さん!美羽この格好凄く可愛いと思いませんか?」 「今さっきそんな話をしてたよ。」 「ですよね。もう昔っから美羽は可愛いからモテたんですよ。」 「だろうね。」 「ちょっと一花褒めすぎ。」 「そんな可愛い美羽が店番してくれてたらお客さんも益々増えてくれると思うんですけどね。お母さんが復帰した後もは出費も多いだろうし続けてもらいたいよ家としては。」 「高井さん大好評だよ。続ける?なんて…あ、でもが決まれば俺が夜迎えに行けるなぁ。」 「いや…そんな。」 「何ですかあの部屋って?」 「この前高井さんが家のアパートに内見に来ててさ。同じ階の部屋が空いてるからそこに住めばご近所さんになれるなってさ。」 「えぇ!そうなんですね。確かにこの辺り暗いので神谷さんが迎えに来てくれるってなったら安心だよね、ね、美羽。」 「ちょっと一花、そんな…迷惑かけられないよ。」 「何よ照れちゃって~。美羽可愛い~。」 「先帰るわ…。」 二人の会話を側で見ていた拓が一花に小さな声でボソッと言うと一人さっさと外へ出て行ってしまった。 そんな拓に声を掛けるタイミングも無く一花は拓の姿を店内から見送る。 それを見た神谷さんも私と一花に挨拶をすると拓に続いて店の外へと出て行った。 店内に残された私と一花。 そんな一花は私に神谷さんとの話をまたしてくるのだった。 「この前電話であまり話せなかったんだけど、美羽はさ神谷さんの事、本当の所どう思ってるの?」 さっきまで神谷さんが座っていた椅子に腰掛けながら私に質問してきた。 「か、会社の仲良い先輩だよ。」 「それは分かってるって。私が聞きたいのは神谷さんを好きなの?って聞いてるの。」 「…まだ…良く分からなくて正直。実は告白されてるんだけど待ってもらってて。」 「そうだったんだ。まぁなんとなく神谷さんが美羽を見る目とかで好意はあるんだろうなと思ってはいたから神谷さんは美羽を好きだと分かってはいたよ。そっか。美羽は今そういう感じな訳ね。」 「うん…。」 俯きながら返事をする私に一花は。 「まっ、真面目で責任感の強い美羽だから中途半端に付き合ってしまう事が神谷さんに失礼だと思ってるんだよね?…そんなとこじゃない?」 一花の顔を見て黙ったまま頷く。 「人に対してきちんと向き合って考えられるのも相手からしたら嬉しい事だと思うな。例えそれが直ぐに返事をもらえないとしても。」 「そうなのかなぁ。なんか優柔不断なだけな様な気もする私は。」 「美羽を長年見てきてる親友の私から言わせればそうじゃ無い。美羽は相手を決しておざなりにせずに思いやれる優しい女の子なんだからね。」 一花の言葉が私の胸に強く響いた。
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