episode 6

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その頃。 あの三人の盛り上がる会話に虫唾が走り居ても立っても居られなくなった俺はその場を離れ一人家へと歩を進めていた。 階段を下りて美羽と神谷さんの姿が目に飛び込んで来た時醜い嫉妬心が俺の全部を埋め尽くした。 美羽を気付かれない様にチラリと見ればなんだか恥ずかしそうに二人の会話に混ざっていた。 そして一番引っ掛かっているのは神谷さんと同じアパートに住むという俺には信じ固い話だった。   神谷さんが送り迎えをする?…はあ?何なんだよ、美羽の彼氏にでもなったつもりかよっ。 まさかもう付き合っているのか…。 握った拳にグッと力が入る。 「弟君っ。」 ふざけた呼び方で俺を呼び止めるのは神谷さんだった。 ムッとした顔で振り向くと呆れた様に俺を見てきた。 「ちょっといきなり帰っちゃうんだもんびっくりしたよ。そんな怖い顔しないで話聞いてくれよ。」 「何を話すんですか?」 「え、高井さんが俺のアパートに住むかもしれないって話気になってないの?」 「別に。」 「いやさ、あれは本当に偶然でさ。たぶん不動産屋におすすめのエリアと物件って事で紹介されたんだと思うよ。」 「気になってないのにわざわざ俺に話さないで良いですよ。」 「そんな我慢しなくて良いのに。」 「我慢?はは…。」 俺は鼻で笑ってやった。 「…っそう。分かった。大学生と社会人で張り合うのは俺的にあんまりフェアじゃない気がしたからこうやって話して教えてあげたんだけどどうやらそんな気づかい無用って事だね。」 神谷さんの俺を見る目に力が入る。 「気づかい?そんな物最初から貴方に求めて無いですよね俺。」 「そうだけど。俺は君より大人だから。配慮したつもりだよ。」 「勝手にそんな事して自己満足しないで下さいよ。そんな事してくれなくても俺は貴方と張り合う自信ありますから。」 「言ってくれるね。」 「馬鹿にしてんですか?」 「して無いして無い。でも、俺は大学生の君と張り合おうとは思ってない。だけど男として俺は君に負ける気はしない。」 「はあ?…ったくおじさんが何言ってんだか…。」 俺は最高に不機嫌なまま神谷さんにクルリ背を向け歩き出した。 「これからは遠慮無くいかせてもらうよ。」 後ろで俺に何か言ってんな。 「君よりも俺の方が彼女を受け止めるだけの器もあるしな。彼女を幸せにする自信もある。」 「…っるせぇ。」 「付き合って欲しいと伝えた。」 「…。」 「彼女にキスした。」 「…っ!?」 俺はついカッとなって神谷さんに近寄り胸ぐらを掴む。 「感情に任せて殴っても良いけどそんな事してる時点で君は俺よりはるかに子供だと認めざるおえないな。そんなんで本当に高井さんの心を掴めるのか?」 神谷さんを思い切り睨みつける。 胸ぐらを掴む手が怒りで振るえる。 すると神谷さんを睨みつけるその先に通行人が少し離れた場所からこちらへ向かって歩いて来るのが目に入って来た。 俺はパッと手を離し我に返る。
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