episode 6

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「へぇ~。家族写真撮ったんだ。」 「うん。この歳でちょっと恥ずかしかったけど。」 俺も橋本も橋本の部屋へ行ったのを最後にお互いテストやらバイトやらで予定が合わず最近会えていなかった。 今日は二人共少し時間も取れるので夕飯を食べながらミーティングをしようという話になり地元のファミレスに来ていた。 メニューに目を通し俺はチーズハンバーグセット、橋本は和風パスタでそれぞれドリンクバーを付けて注文した。 ドリンクバーで取ってきた飲み物を口にしながらメインが来る迄の間橋本がパソコンで資料を纏めて来てくれていたのでそれをテーブルに広げだした。 俺が頼んだ訳では無いけど橋本は橋本で多忙なのにも関わらずこうやって俺に分かり易く資料を作って来てくれる所は真面目で見習いたいと思ったし真剣に取り組んでいる姿勢に俺も出来るだけ応えていきたいと思いながら資料に目を通していた。 ここにもある通り前回はざっとではあるがネット販売に向けて必要になる物や広め方等を話して終わった。 「あの、俺さ一つ考えがあって。この広め方なんだけどさ。」 「うん。」 「タウン誌とかのフリーペーパーに載せて貰ったりするのはどうかな?良く郵便受けに入ってくるあれ。」 「あっ!それ私も思ってたんだよね。良いかも。」 「載せるにもお金はかかるから後々また相談なんだけど広範囲の地域の皆さんに見てもらえる可能性は高い。まだ橋本のケーキ屋の存在を知らない人達だっているかもしれないし知っていてもネット販売が出来るって分かったらまたそれを利用してくれる様になるかもしれないし。」 「そうだよね。それは前向きにやる方向で進めよう。」 「だな。」 「後ショップカードを作って配ったり置かせてもらったりもしたいなと考えてる。」 「そうそう、家ショップカード作って無いんだよね。お父さんもお母さんもそういうの興味無くてさ。でもあった方が絶対良いしそれは作りたい。」 「うん…少しずつ決まって来たな。」 するとそこへ二人の注文したチーズハンバーグと和風パスタが運ばれて来た。 テーブルにセットされているカトラリーからナイフとフォークを橋本が取って渡してくれた。 鉄板の上で肉汁が油と共にジュワジュワ音を立て食欲をそそる。 ナイフを大胆に中央から入れると一気にトロトロのチーズが溢れ出してくる。 「ぷっ。拓その顔子供の時の拓みたい。」 「あはは。見られた。俺さ昔っからチーズハンバーグ大好きでさ、このナイフ入れる瞬間がたまらないんだよな。」 「もしかして美羽に作ってもらったりもしたの?」 「あぁ…たまにだけどな。」 「だよね~。可愛いが好きって知ったら優しい美羽だもんせっせと作っちゃうだろうなって思ったんだぁ。」 「本当に。美羽が姉で…家族で…良かったと思ってる…。」 「拓…?」 急に声色の変わった俺の様子に気づいた橋本。 俺は鉄板の上でまだ音を響かせているハンバーグを只黙々と食べた。 噛めば噛むほど何故だか胸がギュッと締め付けられて苦しかった。
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