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その後俺達はファミレスを後にして俺は橋本を家迄送っていた。
ファミレスのある賑やかな通りを抜けると途端に人の流れは減り夜というのもありシンと静まり返る。
今の今迄街の騒音で感じなかった二人の沈黙がやけに気になった。
カツカツと無機質な足音だけが夜道に響く。
そして人っ子一人居なくなったその時橋本が俺の服の裾をクイクイッと後ろから引っ張った。
橋本の方を振り向くと少し俯き加減で立っていた。
俺は橋本に向き合う様にして立ち橋本の言葉を待った。
「拓の事…好きになった。付き合って欲しい私と。」
「橋本…。」
「拓と再会して頻繁に二人で会う様になって私毎回ドキドキしてた。拓は私の事どう思ってる?」
「綺麗な女の子だと思ってるよ。」
「あ、ありがとう。」
街灯に照らされた下で耳を赤く染めながら恥ずかしがる橋本はとても可愛らしいと思った。
俺を好き。
橋本は俺だけを見て想ってくれている。
それだけで胸がじんわり温かくなった。
俺が心から欲しいと願うその想いを橋本が埋めてくれるかの様に。
昔から想い続ける事が当たり前だと思っていたけれど想われるのもそんなに悪く無いのかもしれない…橋本なら。
弟…姉…家族。
父さんのあの写真館での笑顔が頭にこびりついて離れない。
身動きが取れなくなって気持ちが押し潰されて行くばかりの日々に俺はもう…。
「付き合おうか。」
そう口走っていた。
そして次の瞬間橋本の腰を引き寄せ頬に手を当て唇を重ねる。
「っん!?」
驚く橋本を気に留めず強引に舌を入れていく。
次第に橋本も理解し舌を合わせてきた。
「…っんん、、」
何かが違う…違うと更に奥深くへと探って行く。
お互い息遣いは荒くなり口内を弄るそんな俺の胸を橋本は手で押し返す。
はっとして俺は直ぐさま謝る。
「ごめんっ。」
「はぁ…はぁ…だ、大丈夫。ちょっとびっくりしただけ。」
「本当ごめん。」
肩で息をする橋本の頭を優しく撫でた。
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