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高校一年のある日。
学校から帰って来た拓は髪が黒から金髪になっていた。
拓の通っていた高校は校則が緩く割と身なりは自由だった為特別怒られる様な事は無かったのだけれど、同時にピアスも片耳に五つ位空けて帰ってきた拓を見てお父さんは口を出さずにはいられなかった。
「拓…どうしたそれ。」
お父さんは自分の頭と耳を指差す。
「…染めたし空けた。」
仏頂面でそう一言。
お父さんは怪訝な顔を浮かべながら前を通り過ぎ部屋に入る拓を見ていたがそれ以上は何も話し掛けなかった。
私はリビングから二人の様子を隠れる様に見ていた。
最近…高校生になってからだろうか拓の様子がおかしいのは私もお父さんも気が付いていた。
テレビを見れば良く笑い、お父さんとの会話だって楽しそうにしていた拓なのにだんだんと笑わない拓になっていった。
帰りが深夜になる日も少なくなかった。
帰って来ない日だってあった。
顔に傷を作って来た時も。
私が洗濯をしていると拓の服からは必ず服に染み付いた煙草の臭いがした。
そして拓は私と殆ど目を合わせてくれなくなった。
嫌な事を拓にした覚えも無かったので答えをずっと探していた。
でも最後迄分からないまま。
急にこんな風に変わってしまった拓が私は少し寂しく思った。
思春期。
その三文字が今の拓にこういった形で訪れているとお父さんは私に言った。
これは人それぞれに違うから私みたいに全く感じ無い子もいれば、拓みたいに尖ってしまう子もいるんだそう。
私が初めて拓に朝「おはよう。」って言われた日のあの引きつった可愛い笑顔の拓はもう存在すら感じ無くなっていた。
一花ちゃん家の帰り道。
泣いている私をもらったシュークリームが潰れてしまうぐらいギュッと抱きしめてくれた拓。
優しい拓…。
心配したお父さんは一応担任の先生と話し合いをしに行ったみたいだった。
けれど確かに身なりは派手になったけれど友達関係は良好で、その他のトラブルもなさそうだった。
少し安堵したお父さんと私はこのまま拓の様子を見守っていく事に決めた。
お父さんも同性だからなんとなく分かる所もある様で。
だから私はお父さんに託す事にした。
私はまだ子供でそういうのにはまだまだ疎かったから。
それからの高校三年間、お父さんは毎日拓の様子に気を配りながらの毎日が過ぎていくのだった。
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