episode 6

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俺は橋本を落ち着かせる様に手を繋いで家迄送り届けた。 家に着いたら連絡を入れると約束をした。 キスの後橋本は普段と変わらずに接してくれていたのが逆に気になってしまったから。 今頃橋本はどんな風に思っているだろうか。 あんな当てつけの様なキスをした俺を。 俺は不安に駆られていた。 亜由美の事があって今度こそは大切にして行きたいと思っている。 そんな亜由美とは大学でも会う事は無く噂話すら耳にしない。 亜由美の性格上きっと新しく出来た男に毎日夢中になっているんだろう。 いい加減で冷たくしてばかりだったこんな酷い俺なんかさっさと忘れて他の男ともっと楽しい日々を送ってくれている事を願う。 過去の思い出を蒸し返すのも今日で終わりにしないといけない。 俺は橋本を大切に想って行くんだ…。 今家に着いた。 今日は話し合いで色々決まって良かった。 また近々ミーティングしよう。 ────────。 家に着き直ぐさま橋本にメッセージを送るとそのままリビングへ行きスマホをテーブルに置いて冷蔵庫のミネラルウォーターを飲んだ。 「拓か?風呂空いたぞ。」 廊下に出ると洗面所から顔を覗かせる父さんに促されて俺も続いて風呂に入った。 さっきは送ってくれてありがとう。 色々と進展してこれからが凄く楽しみ! それと。良い返事もらえて嬉しかった。 これからは彼氏彼女として宜しくです。 ──────────。 …。 …送信っと。ふふ。 あ~なんだかまだ信じられないな。 拓と付き合えるなんて。 私に興味なんて無いのかもって思ったんだけどそんな事は無かったんだよな。 それにいきなりキスなんて本当びっくり。 もしかして次会ったら…あぁ恥ずかしいっ。 でもあのキスの後私から顔を離す拓の顔が少し悲しそうだったのは私の勘違いなのかな…。 さっき別れたばかりなのにもう拓に会いたい。 また来週拓に会えると良いな。 「あれ、美羽いつの間に帰ってたんだ?ドライヤーかけてて気づかなかったな。お帰り。」 「今さっき帰って来た所。」 「そうか。今拓が風呂入ってるからちょっと待ってて。」 「うん。部屋で待ってる。」 マンションに入る拓の後ろ姿が見えて追いつくには少し距離があったので私は拓の後にエレベーターに乗り家に入った。 そして今日もおじさんは私に余ったケーキを持たせてくれたので冷蔵庫にしまおうとリビングへ向かったその時。    テーブルに置かれた拓のスマホが点滅し偶然目に飛び込んで来たあの文章。 そういう事か…そうか…拓も私と同じ思いっていう訳なんだよ…ね。 私は安堵した。 これからはきちんと何の迷いも無くお父さんと拓で家族をやって行ける。 これが私の望んでいた形なんだから。 ────────────。
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