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あの爽やかにニコニコと笑う顔が想像出来てしまう程のご機嫌な声の神谷さんと話を終えると私もつられて笑顔を作っていた。
そしてそんな神谷さんと言えばお父さんの誕生日プレゼントだ。
今夜はお父さんの誕生日会をする事になっている。
気に入ってくれると良いんだけどな。
ご馳走も昨日のうちから少し用意してローストビーフを作った。
後はクリームシチューにカルパッチョを作れば準備は整う。
お父さんが帰って来る前におじさんからケーキを受け取ってキッチンへ直行する。
拓にも前もって連絡を入れたら時間を作ってくれたみたいで安堵した。
夜迄予定がびっしりの私は気合いを入れて残りの仕事に手をつけた。
「あっ、部長。」
席を外していた亀谷部長がデスクに戻って来た。
私はバッと席を立ち嬉しさの余りデスクの三つ四つ向こうから神谷さんの契約が決まった事を報告した。
神谷さんの報告に部長も手を叩きながら私と一緒に喜び合った。
そこから話は神谷さんの話になる。
亀谷部長と神谷さんはお互い営業に異動してくる前は同じ部署で働いていたそうだ。
人当たりも良く頭の回転も早いので昔から優秀だと評判だったそう。
一度仕事に打ち込むととことんのめり込み完璧にやり遂げる為周りが見えなくなる事も度々あったみたいで当時付き合っていた可愛い彼女と破局してしまったのはどうやら神谷さんが仕事に没頭し過ぎて彼女を野放し状態にしたのが原因との事だった。
前の彼女は神谷さんにどうやらベッタリでかまってちゃんタイプだったらしく手を焼いたそう。
それでもイケメンの神谷さんは周りが放ってはおかない。
彼女と別れたと噂を耳にした女性社員は当然神谷さんにアピール合戦。
しかし美人だろうが誰も相手にはせず次第に神谷さんの周りからは女性の姿は消え失せてしまったという。
神谷さんに彼女がここ何年か居ないのは神谷さん自身があえて彼女を作らなかった様だ。
部長から話を聞き私の片隅にあった疑問もすっきりとした。
しかし亀谷部長と神谷さん。
そんなプライベートの話をする程二人の仲は良いみたいだ。
「最近高井さんと神谷君て上手いこと噛み合ってるよね。」
突然部長が私にそんな事を言ってきた。
「そうですね。神谷さんは何時も的確で仕事も分かり易く教えてくれますし感じも良いので。きっと神谷さんが私に気をつかってくれているから私が仕事はかどるんだと思います…はは。」
「まぁ、神谷自身のそんな魅力もそうだけど。高井さんと接する神谷はそればかりでも無い気がする。」
「?」
「神谷を囲む過去の女性達を見ていて思ったんだけど今神谷はさ、自分と同じ志を持った女性に惹かれてるんじゃないかなって。」
「惹かれてるって、えっ!?志…?」
「そう。つまり自分と同じ位仕事に一生懸命になれる人かな。」
神谷さんと私の今現在のこんな状況をまるで亀谷部長は知っているかの様に話してくるのだった。
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