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亀谷部長は続ける。
「神谷に好意を持って近づいて来る女性達は皆それなりに美人で可愛い子ばかりだった。神谷だって男だし魅力的な女性は好きなはずなんだけど前の彼女の事があってからか容姿は不足無くてもなかなか付き合うまでに至らなかった。それで俺はそう思ったって訳。いい線行ってると思うけど。」
「そういう事ですか…。」
「だからさ、仕事に一生懸命でおまけに可愛い高井さんは神谷にとって最高の相手になるんじゃないかなと…まぁ、でもあくまで俺の考えだから。けど二人で居る時の雰囲気違和感なさ過ぎる位お似合いだけどね…おっと、あんまり余計な事言うとあれに引っ掛かる。」
「コンプライアンスですね?」
「それそれ。仕事します俺。」
「あはは。気にしてません。大丈夫です。では私も仕事に戻ります。」
亀谷部長から聞いた過去の神谷さんの話は特別耳を塞ぎたくなるような事でも無く寧ろ神谷さんが真面目で仕事に対しても、そして女性に対しても過去の経験から中途半端にするのではなく真摯に向き合える男性なのだと気が付けた。
あれだけイケメンでもてる神谷さんの存在を何処かフワッとした感覚で捉えていた部分があったけどこの瞬間からそれは私から一切消えて何故だか早く神谷さんの顔が見たくなった。
今日は契約も取れたしもう帰って来るのかな…神谷さん。
「あれ!?えっ、拓何で?」
俺は橋本の通う大学の前に居た。
「ここ一回来た事ある。」
「そうだったの?」
「うん…滑り止めで。」
「あぁ…そういう事ね。はは。」
「あっ、悪りぃ。変な意味じゃ無いから。ごめん。」
「良いよ。それより今日約束して無かったよね?急用か何かあったの?」
「…いや。会いに来ただけ。」
「えっ、あぁ…なんか嬉しいな。」
嬉しそうに恥ずかしがる女の子は可愛い。
「橋本がこの後予定あるならこのまま帰るけど。」
「この後大学の友達とカフェで少し勉強するんだけど…あ、でも友達がバイトあって二時間位で終わるから良かったら私の部屋で待ってる?」
「うん…じゃあそうしようかな。家何処?」
「凄い近いから口頭で道教えるね。」
橋本に自宅迄の道を教えてもらうと鍵を預かり一足先に俺だけ家に向かった。
一人暮らしの女性の部屋に行くのは初めてで少し緊張していた。
二時間か…とりあえずコンビニで飲み物とスナック菓子を買ってテレビでも見ながら暇つぶしでもするか。
それにしても地元から電車を乗り継ぎ約二時間弱。
確かに家から通うのは一苦労な場所。
それが毎日ともなれば行って帰って来るだけで疲れてしまうし時間も勿体ない。
下宿する理由は十分にある。
そしてこんな場所迄電車に揺られながら足を運んだ俺。
特に約束もしていなければ急用でも無い訳で。
橋本に対する新たな気持ちが俺を突き動かしていたんだ。
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