243人が本棚に入れています
本棚に追加
右手を下へと移動させ体の最も熱を持った場所へと中指を使って触れてみる。
そして湿り気を帯びた一帯を中指ですくい上げるかの様に上下させるとさっきよりも大きく声を上げて反応する橋本。
体を起こし息を乱しながら服を脱ぎ捨て露わになった肌を再度橋本の体に沿わせる。
華奢な首筋に唇を落とし潤んだ瞳と物欲しげな口にも唇を当てて行く。
そんな俺の体は橋本よりもより熱く火照りを増し、はやる気持ちを抑えながら準備をして優しく脚を広げながら繋がろうとしたその時。
ふとサイドテーブルの写真が目に入り美羽と目が合った。
寸前の所で動きが止まりあんなに火照った体から一気に熱が引いて行く。
「…っはぁ…はぁ…。拓?」
我に返った橋本が下から心配そうな表情で見上げている。
「拓、顔色悪いけど…どうしたの?」
「ごめん。少し体調が…。」
「良いよ、全然。それより大丈夫?」
「うん…大丈夫。」
俺の様子を気にした橋本は床に無造作に置かれた下着とシャツをササッと着ると俺に。
「何か温かい物でも飲もっか。」
そう言ってベッドから離れキッチンに向かった。
自分も服に袖を通し橋本がコーヒーを用意する姿をベッドから見つめながら俺は無性に申し訳ない気持ちで一杯になった。
気が付くとコーヒーを用意する橋本を後ろから強く抱きしめていた。
「…拓はどうする?食べられそうか?」
はっとして父さんに振り向く。
「あっ、あぁ…うん。もう少ししてからにしようかな。先に風呂入るね。」
「そうか。じゃあ美羽と食べるかな。」
「うん。そうだ、コーヒー煎れるね。」
「ありがとう。ちょっとミルク入れてくれるか?」
「分かった。」
父さんと美羽のやり取りを背中で聞きながらリビングを出た。
バタン…とリビングの扉をゆっくりと閉めると一つ小さなため息がこぼれた。
何故あの時橋本を抱けなかったのか…。
実際に美羽を目の前にしながらあの時の橋本との情事を頭に思い浮かべられる程の余裕があるくせに、あの部屋にあったのは美羽本人なんかじゃなくただの写真。
たかが写真なんだぞ…。
たった一枚の写真が俺をあんな風にさせた事が不覚でならなかった。
最初のコメントを投稿しよう!