0-3 突入

1/2
前へ
/8ページ
次へ

0-3 突入

「人の母親ダシにして盛り上がってんじゃねえーっ!」  ダァン!!! とドアをヤクザキックで破壊し、大教室へ真っ先に突入していったのは一体だれか。  そう、彼らが話題にしていた張本人──船橋マリナその人です。 「なーにが自由党重鎮の犯罪リストじゃ! わたしはそんなもん持っとらんわ!」 「ふ、船橋マリナ!? その白い制服は……!」  壇上の内田は呆気にとられ、口をパクパクさせながらマリナの方を見ています。亡くなったお母さんをネタにされてキレているマリナの方を。  湧き上がっていたオーディエンスも同じく、「船橋マリナ……」「写真より可愛いな」「隣の色白の子めっちゃ綺麗」「なんでここに……!?」などとざわつき始めました。 「その制服はまさかANNA!? クソッ、ANNAに取られたとかいう話はマジだったのか……!」 「マジよ! それより、よくも人の母親をしょーもない陰謀論のネタにしてくれたね!」 「それにしてもANNAが来たか、厄介だな……」  内田は逃げ道を探るようにキョロキョロと左右を見回しました。  そして教壇の脇にある非常階段に目をつけ、そこから逃げていこうとします。  しかしその時、マリナが〈杖〉を振り抜いて魔法を行使。その小さな体から冷気の魔力が湧き上がり、白い霧のようなエネルギー弾が飛んでいきます。  エネルギー弾は内田に先んじて非常階段のドアに着弾し、氷で固く閉ざしてしまいました。悔しそうに舌打ちする内田。 「逃がさないから!」 「……戦るしかないか……!」  すると内田もズボンのポケットから〈杖〉を引っ張り出して起動。私たちの方へ向けながら、同志たちに言いました。 「おい、みんな逃げろ! 今からここは戦場になる!」 「逃げろって!?」「どういうことですか内田さん!?」「ていうかなんですか今の光!」「まるで意味が分からんぞ!」「あんたを置いて行けるわけないでしょ!」  一方、それを聞いたナツミ教官も呼びかけます。 「アタシたちからも警告するわ。ここにいたら戦闘に巻き込まれるわよ。災害用の避難誘導プログラムを作動するから、それに従って逃げなさい」 【フスタ、学内ネットワーク経由でカタギの避難誘導をお願い。それと記憶処理班を下で待機させて。ここで見たものを忘れてもらうわよ】 【りょーかーい】  ……裏でフスタさんにも指示を出しながら。  一流のハッカーでもあるフスタさんは即座に学内ネットワークへ侵入し、館内全ての非常ベルを作動。ジリリリリ!!! というけたたましい音が鳴り響くと、カタギの人たちもこれから起こることを本能的に理解したのか、列をなして速やかに出ていきました。  これから起こること──そう、魔法使い同士の戦闘。その火蓋が切って落とされることを。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加