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0-3 突入
「人の母親ダシにして盛り上がってんじゃねえーっ!」
ダァン!!! とドアをヤクザキックで破壊し、大教室へ真っ先に突入していったのは一体だれか。
そう、彼らが話題にしていた張本人──船橋マリナその人です。
「なーにが自由党重鎮の犯罪リストじゃ! わたしはそんなもん持っとらんわ!」
「ふ、船橋マリナ!? その白い制服は……!」
壇上の内田は呆気にとられ、口をパクパクさせながらマリナの方を見ています。亡くなったお母さんをネタにされてキレているマリナの方を。
湧き上がっていたオーディエンスも同じく、「船橋マリナ……」「写真より可愛いな」「隣の色白の子めっちゃ綺麗」「なんでここに……!?」などとざわつき始めました。
「その制服はまさかANNA!? クソッ、ANNAに取られたとかいう話はマジだったのか……!」
「マジよ! それより、よくも人の母親をしょーもない陰謀論のネタにしてくれたね!」
「それにしてもANNAが来たか、厄介だな……」
内田は逃げ道を探るようにキョロキョロと左右を見回しました。
そして教壇の脇にある非常階段に目をつけ、そこから逃げていこうとします。
しかしその時、マリナが〈杖〉を振り抜いて魔法を行使。その小さな体から冷気の魔力が湧き上がり、白い霧のようなエネルギー弾が飛んでいきます。
エネルギー弾は内田に先んじて非常階段のドアに着弾し、氷で固く閉ざしてしまいました。悔しそうに舌打ちする内田。
「逃がさないから!」
「……戦るしかないか……!」
すると内田もズボンのポケットから〈杖〉を引っ張り出して起動。私たちの方へ向けながら、同志たちに言いました。
「おい、みんな逃げろ! 今からここは戦場になる!」
「逃げろって!?」「どういうことですか内田さん!?」「ていうかなんですか今の光!」「まるで意味が分からんぞ!」「あんたを置いて行けるわけないでしょ!」
一方、それを聞いたナツミ教官も呼びかけます。
「アタシたちからも警告するわ。ここにいたら戦闘に巻き込まれるわよ。災害用の避難誘導プログラムを作動するから、それに従って逃げなさい」
【フスタ、学内ネットワーク経由でカタギの避難誘導をお願い。それと記憶処理班を下で待機させて。ここで見たものを忘れてもらうわよ】
【りょーかーい】
……裏でフスタさんにも指示を出しながら。
一流のハッカーでもあるフスタさんは即座に学内ネットワークへ侵入し、館内全ての非常ベルを作動。ジリリリリ!!! というけたたましい音が鳴り響くと、カタギの人たちもこれから起こることを本能的に理解したのか、列をなして速やかに出ていきました。
これから起こること──そう、魔法使い同士の戦闘。その火蓋が切って落とされることを。
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