二、監視、監視!

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二、監視、監視!

 ある大臣が、一つ画期的なシステムを考えついた。これが実現すれば、この国ひいては人類の生活水準を飛躍的に引き上げられると思われる素晴らしいシステムだった。  しかし、システムを一から組み上げるような専門的な知識は大臣にはなかった。なのでとある大学の研究室に出向き、そこの技術チームに、費用を大臣側で出す代わりに、システムの組み上げを依頼したのだった。  それから一年後、研究室からシステムが完成したと報告があった。大臣が研究室に向かうと、技術チームのリーダーが出迎えた。 「ようやく完成したか、喜ばしいことだ」 「はい、現在見つかっているバグは全て潰しました。潜在的なバグはあるでしょうが、それも発生次第速やかに対応する準備をしています」 「なんだと? まだ不具合の起きる可能性があるのか!? そんなことは許されん! 人類の進歩に関わる大事業なのだぞ、一切の不具合なく作れ! いいな!」 「し、しかし」 「うるさい! つべこべ言うな。金は引き続き出してやるから、完璧なものが出来るまで連絡をするな! わかったな!」  大臣はカンカンに怒りながら研究室を後にした。  それから十年が経った。研究室からは何の連絡もない。流石に大臣も重い腰を上げ、再び研究室に向かった。 「もう十年だぞ、いつまでかかっとる!」 「これは先生、今はまだ完成の目処が立ちませんので……」 「なんだと? 一体何をそんなに時間をかけているのだ! 説明しろ!」  チームリーダーはやつれた顔で説明を始めた。一台の端末を持って来て、大臣の前に置く。 「まず、こちらにありますのが、一番初めに頼まれたシステムです。これをメインシステムと呼ばせていただきます」 「ふん」  そして次にリーダーは別の端末を横に置く。 「これが、メインシステムの動作を監視して、不審な挙動をしそうだと事前に予測したら警報が出るようにしたシステムです。これを監視システムAとします」 「ほう、ちゃんと対策しとるではないか、それで?」  リーダーはさらに別の端末を取り出す。 「これが、監視システムAの不具合を予測したら警報を出す監視システムBです。そして、これが監視システムBの動作を監視する監視システムC。さらにこれが、監視システムCの不具合を予測する監視システムD。続いてのこれは……」 「ま、待て! 監視システムばかりではないか!?」  机の上に次々に取り出される端末に、思わず大臣は声を上げた。 「何故そんなに監視システムばかり作っているのだ!」 「大臣、機械というものはどれだけ正確に組んでも何かしらのバグは起きるものなのです。それこそ作動させて何年も経ってからいきなり不具合が起きることだってある。それを起こさせたくないのなら、こうして監視システムを組むしかないのす。しかし監視システムも機械ですから、やはりどれだけ正確に組んでも何かしらのバグは起きるものなのです……」  リーダーは後ろにあるドアを開け放った。その奥にずらりと並ぶのは、先の監視システムと同型の端末。 「説明を続けさせていただきます。こちらの手前から順に、監視システムDを監視する監視システムE、監視システムEを監視する監視システムF、監視システムFを監視する監視システムG、監視システムGを監視する監視システムH、監視システムHを監視する監視システムI、監視システムIを監視する監視システムJ、監視システムJを監視する監視システムK、監視システムKを監視する監視システムL、監視システムを監視する監視システムを監視する監視システムを監視する監視システムを監視する監視システムを監視する監視システムを監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視監視
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