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その男は、雨でも無いのに合羽を着込み、空いている車両において、妙に身体を密着させて隣に座り、不気味だった。
彼女が少し反対側に身体を寄せると、小声で囁いた。
「に…逃げるな…コロナウイルスが入ってる…こ、殺すぞ…」と、香水の小瓶をポケットから出した。
変質者だろうか。それにしても、コロナウイルスとは、噴射すれば、コイツも感染するのではないのか。
立ち上がって逃げようとすると、シュッと顔に噴射された。
スマホの中に、疫病から守ってくれると云う、妖怪アマビエのイラストが保管されているのを思い出した。
スマホを強く握って、「アマビエ様助けて」と祈ると、掌が熱く感じられた。
突然、猛烈な咳をする音が鼓膜に響いた。
振り返ると、さっきの男が床の上で咳き込みながら吐血していた。
足早にその場を離れ、帰宅後、簡易キットで検査したが、陰性だった。
(写真は、妖怪アマビエ様)
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