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彼女はあたしの姉で〝伊藤栞奈(いとう かんな)〟
栞奈が、あたしに気づいたのか、
「海鈴(かいり)―! 1人で行くなんて酷いじゃない。」
ぷくりと最大限に頬を膨らませて、あたしを見る。
その途端、周りにいた男子生徒の顔が真っ赤になっていく。
「やべぇ。俺、鼻血を吹き出しそう。」
「い、今の内に写メだ!! 」
「今日は、一日中幸せになれるぞ。」
なんて声が聞こえてきた。
ふわりと微笑みながら、栞奈はあたしに近づいてくる。
栞奈の笑顔を間近で見た人の中には、失神する人もいる。
周りからは癒し系らしいけど、あたしからしたら極悪の笑みだ。
周りに、黒い空気を纏いながら目は笑っていない。
「………… 駄目でしょ? 一緒に行動をしなきゃ。惨めな〝あなた〟と歩くと一段と輝いて見えるのに。本当に使えない。 」
あたしの前に立っているせいか、栞奈の本当の素顔は誰も知らない。
唇を歪めた栞奈の、あたしを見る眼差しはとても冷たい。
おもむろに、あたしを強く抱き締めてきた。
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