☆ 対の存在【あたしとあの娘】

2/15
前へ
/604ページ
次へ
彼女はあたしの姉で〝伊藤栞奈(いとう かんな)〟 栞奈が、あたしに気づいたのか、 「海鈴(かいり)―! 1人で行くなんて酷いじゃない。」 ぷくりと最大限に頬を膨らませて、あたしを見る。 その途端、周りにいた男子生徒の顔が真っ赤になっていく。 「やべぇ。俺、鼻血を吹き出しそう。」 「い、今の内に写メだ!! 」 「今日は、一日中幸せになれるぞ。」 なんて声が聞こえてきた。 ふわりと微笑みながら、栞奈はあたしに近づいてくる。 栞奈の笑顔を間近で見た人の中には、失神する人もいる。 周りからは癒し系らしいけど、あたしからしたら極悪の笑みだ。 周りに、黒い空気を纏いながら目は笑っていない。 「………… 駄目でしょ? 一緒に行動をしなきゃ。惨めな〝あなた〟と歩くと一段と輝いて見えるのに。本当に使えない。 」 あたしの前に立っているせいか、栞奈の本当の素顔は誰も知らない。 唇を歪めた栞奈の、あたしを見る眼差しはとても冷たい。 おもむろに、あたしを強く抱き締めてきた。
/604ページ

最初のコメントを投稿しよう!

192人が本棚に入れています
本棚に追加