192人が本棚に入れています
本棚に追加
予想外の栞奈の行動に、周りからは耳を塞ぐような叫び声が聞こえてきた。
そんな事さえ気にしない栞奈は、あたしの腕を力一杯つねった。
「痛っ。」
あまりの痛さに顔をしかめると、面白そうに目を細める。
「私を置いて行くからよ。次からはしないでね? 」
可愛い顔からは想像つかない低い声で話すと、踵を変えて歩きだす。
「栞奈ー!早く行こうよ。遅刻するよ? そんな娘相手にしたら時間が勿体ないじゃない。」
輪の中から1人の女の子が、あたしを睨み大声で叫んだ。
「まひるー 駄目だよ? 私の可愛い妹に〝そんな娘〟なんて言っちゃ。」
コテンと首を傾げ、甘ったるい声を出す栞奈に周りの人々の顔が赤くなる。
ふふふっと小さく微笑む栞奈は、顔を赤く染めている友達であろう女の子へと歩いていき腕を絡めた。
「海鈴、ごめんね? まひると一緒に謝るから許して。」
わざとらしく目を伏せる栞奈に、周りからは野次が聞こえてきた。
「優しいー!栞奈さん。」
「お前、栞奈さんに頭を下げさせるのかよ。」
…………… 毎度の事ながら、溜め息が洩れる。
最初のコメントを投稿しよう!