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怯える表情をする伊藤さんに。
「改めて初めまして、驚かせてごめんなさい。俺は君の付き添いになるんだ。これから宜しくね?」
にこっととびっきりの笑顔を見せる。
「…………付き添いですか?えっと、あの。」
「同じ年ですよね、と言いたいんですよね。」
そう言うと無表情に頷く。
「俺、四月から社会人になるんですよ。だから心配はしないでください!」
「……………は?」
「え?」
俺の発言を聞いた櫂さんと紅葉さんは唖然としている。
そんな中、クスクスクスと鈴の鳴る可愛い笑い声が聞こえてきた。
「面白い方ですね。」
にっこりと笑った伊藤さんに、櫂さんと紅葉さんは顔を見合わせた。
いきなり櫂さんは俺の手首を掴み、伊藤さんから離れるように連れて行かれる。
「な、何をするんですか、櫂さん!」
「今まで初対面の人間に笑った事が無かったのが、初めて笑った。もしかしたら、どこかできっとお前を思い出す。伊藤さんは前に諦めるのかって聞いたら躊躇っていたんだ。だから、絶対に好きなはず!頑張れよ隆哉。住み込みは決定だ。」
焦る俺の声を聞いた櫂さんは、足を止める。
そしてどや顔をしながら発言をする櫂さんに、俺は唖然となりながらも不敵な笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、櫂さん。任せてください!」
ああ、絶対に伊藤さんの記憶を取り戻させてみせる。
その時は告白をまたしようと思う。
本当に初めて守りたいって思えたんだ。
いつか、きっとまた笑ってくれよ。
そのためなら俺は君の側にいつでもいる。
これからは幸せになろう、伊藤さん。
恥ずかしいからみんなの前では言えないけど。
愛している、どんな時も俺は絶対に守ってみせる。
いつか、またみんなで馬鹿やりながら笑おうな。
〈隆哉side終わり。〉
「完。」
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