執事でも、男に変わりはありません。

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 静寂に包まれた廊下は、こんな時に限って誰も通らない。  さらに不運な事に、パーティーのときは邪魔になるからと父に厳しく言われているおかげで、バッグもスマホも持ってきてない。  こんな時に“ケータイを携帯”しないなんて……今まさに非常事態なのに。    燈冴くん……どうしよう…… 「本当に綺麗なお嬢さんだ。これだけ写真が撮れれば十分な金になる。  それだけの価値はあるからな。さて……それに併せて次はそのネックレスを拝ませて貰おうかな」  散々パシャパシャと撮影した挙句、満足も半々に、カメラから離した手が 今度はわたしの胸元に伸びてきた。 「い……や…… こ……ないで……」  ゾクっと鳥肌が立つ。怖くて全身が凍りついたみたいに動けない。  目を閉じたら次に何されるかわからないから……そう思うと、もっと怖さが増してくる。 「……ッ」  ヤバい……泣きそう。 じんわりと目の奥が熱くなって、溢れそうな涙を堪えながら助けてほしいって何度も心で叫んだ。  すると不思議なもの。  遠くの方から誰かの走る足音が聞こえてきた気がした。  あー……ついに幻聴まで聞こえてきちゃったんだ。  けれど、大理石の床を擦る革靴の音が反響して徐々に大きく近づいてくるのがわかって、『もしかして』とわたしは音の方向に顔を向けた――――― 「緋奈星さま!」
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