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「ごめん……燈冴くん」
温度差の感じない冷淡な物言いで、眉を顰めて怖い顔をする燈冴くんに何も言い返せるはずがない。燈冴くんの心配する気持ちも痛いほどわかる。社長からわたしを預かっている彼にとっては責任があるから。
それにあれは確かに誤解を招く。燈冴くんが怒るのも無理ない……
『緋奈星さま』と、俯くわたしを呼ぶ声に、恐る恐る顔を上げて反応すると切ない表情で彼は言う。
「貴女に何かあったら、俺が嫌なんです」
「え……」
「好きな人が他の男と2人きりも耐えられませんが、手を出されるようなこと……それを黙認出来るほどの余裕はない。緋奈星さまに触れていいのは俺だけだと、そう思っていますので……」
「燈冴くん……」
真剣に真っ直ぐな言葉がわたしには何よりも嬉しくて、愛されてるって感じるから、想ってくれているだけで満たされる。
わたしもこの人が好き。会社も父も大切にしてくれる燈冴くんが、大好きなんだ……ーーーーー
「邪魔してすみませんが」
ダイニングルームの入り口から聞こえてきたコホンと咳払いして割って入るような遮る声に、燈冴くんを見つめていたわたしはビックリして振り返ると、そこには燈冴くんから借りたであろう白いシャツを着用しお風呂上りのためか少し頬に赤みを帯びた鮎沢さんの姿があった。
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