会社の危機と彼の想い。

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 忘れてた……わけじゃないけど、このタイミングで戻ってくるなんて思わなかったから気持ちアタフタしてしまう。  彼の顔色はさっきまでと違って、青白さもなく唇も頬と同じで血行よく見える。 「まったく。本当に邪魔してくれましたね」  燈冴くんは『やれやれ』と迷惑そうだけど、言われた鮎沢さん本人は気にする素振りもなく、それどころか視界にすら入れずに真っ直ぐわたしの方へと近づいてきた。 「お風呂、ありがとうございました。おかげで寒さが治まりました」 「あ、ううん。もう平気そうですか?」 「はい。ご心配お掛けしました」  そう言いながら頭を下げる鮎沢さんの横で、燈冴くんは不機嫌そうな表情をしたまま。そえだけで言いたい事がなんとなくわかるって、ただただ怒っているだけだと思うんだけど…… 「僕は帰りますね」 「あ、じゃぁ車―――」 「私は送りませんよ」    わたしが最後まで言う前に何を言おうとしたのか瞬時に悟った燈冴くんが、即行拒否。  腕を組み、思春期の子供みたいに拗ねていて。 「そちらが勝手に来たんでしょう。私が送る義理はありません」  断固として助ける気はないみたい。こういうところは本当、頑固…… 「せめて、傘を……」 「ありがとうございます。本当、緋奈星さんお優しいですね」  強調しないで。鋭い眼差しが痛いから。
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