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「さっそくですが。今後について話を進めましょうか」
挨拶も適当に本題に切り替える鮎沢社長の一言で、場の空気が更にピリつく。
「今後の事、とは?」
「それはもちろん。漣社長の後任の件ですよ」
“恐れていた事態がついに来た”って、わたしはゴクリと唾を呑んだ。
「その事だが、鮎沢社長。悪いが後継者の話は白紙に戻す方向で検討している」
「はい?」
父がハッキリと断ると鮎沢社長の表情は一変。目を細め不満げな顔の前で手を組み、瞬き1つせずに低い声で言う。
「どういう事ですかね、漣社長。白紙に戻すとは。きちんと説明して頂けますか」
「ここ最近の社長の行動は目に余るものがあります。ご自身が1番よくご存知かと。」
「いえ?身に覚えがないので存じ上げませんが」
父も負けずと言い返すが、鮎沢社長は一切の動揺を見せず反撃をやめない。
「今更この件を白紙に戻すなんて、いったいどう為さったんですか。漣社長らしくもない。そもそもこの話は会社の今後のため。御息女しかおらず跡取りが見つからないとの事で私は協力したまで」
社長の言葉に胸がズキンと痛む。確かにこの人の言う通り、父の子供はわたししかいないから後継者に出来ないって、だからこんな話になったわけだから。そこを突かれると言い返せなくなる。
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