最終章:無彩色な貴方に恋をしました。

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 それからの事だけど――  父の、鮎沢社長へとの発言から事態は大きく変わったのはあっという間で。  鮎沢社長の、脱税が公に発覚。なだれ込むようにニュースに入ってきたこの事件に、テレビの中で鮎沢社長は『こんなはずじゃなかった』とガックリと肩を落として落ち込む様子が映し出されていた。  そんな彼の姿を、わたしと燈冴くんは社長室で父と共に複雑な思いで観ている事しか出来ず、これで良かったんだと言い聞かせるばかり。  そしてこれには、ある人が見つけたがキッカケだったとか。 ――― ―― 「芹斗くん、これで良かったのか?」  世間が鮎沢社長の公になった事件で大騒ぎしている最中、父の元を訪れたのは鮎沢芹斗さん。  いつものように父の隣に立つ燈冴くんと、今日はわたしもその隣で2人の話を静かに見守っている。 「はい。漣社長のおかげで父が脱税していた事実が明るみになりましたので、これで良かったと思っております。ありがとうございました」  そう言って深々と頭を下げる彼に、胸の奥がズキンと痛む。  鮎沢さんは、自身の父親の不正の話を耳にしたあと、事実かどうか1人で調べていたらしく。証拠となる帳簿を、自宅のパソコンから見つけたとの話らしい。
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