執事でも、男に変わりはありません。

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 わたしにとっては兄みたいな存在で、それは父も同じに思っているみたい。 *** 「緋奈星。またお前は燈冴くんに起こしてもらったのか。21歳にもなっていいかげん1人で起きなさい。彼に申し訳ないだろ」  高級ホテルの大広間のようなダイニングルームに、貴族や王族達が晩餐会やらに使うような長テーブルが1つ。  そのド真ん中で、すでに朝食を食べ始めている父は、わたしが来るなりいきなり説教。  まぁこれも毎朝恒例の挨拶みたいなもの。 「(わたくし)の事はお気になさらず。それよりも起こすのが遅くなってしまい、こちらこそすみません」  父に丁寧に深々とお辞儀をする燈冴くんを余所にわたしは、しれっと自分の席についた。  あー……お腹すいた。なんて思いながら。  秘書であり執事として父は特に燈冴くんを気に入り、絶対的な信頼を寄せている。  だからなのか彼もまた父の前では見事なくらいの仕事っぷり。  ”(わたくし)”と”俺”で使い分けているあたり、わたしの前では”素”が出てる節があるんだろうな。 「緋奈星さまの朝食も今ご用意します。少しお待ちください」  わたしにも一礼し、足音1つ立てず静かに立ち去っていく姿はよく出来た執事。  さっきまでベッドに乗っかってた人とは、まるで別人。
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