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親方は感性を述べる。
「でもね、私は導成術があまり得意ではなくてね、感覚でパンを作る方が合ってたんだ。導成士は膨大な知識に裏打ちされた、組み立て。私は昨日のパンを大量生産より、今日の美味しいパンを作りたかった。私は毎日パンの知識を1つ増やしていくのなら、あの煩雑な組み立ては要らなかったのさ」
親方はあんな夢のような、大量生産が要らないか。親方は続ける。
「だから、昨日の量産パンより、今日の美味しいパンが作りたい。ただそれだけさ」
リデロさんが口を開く。
「あのね、ミミちゃん。量産パンにも良い所がある、素早く行き渡らせる事。手作りパンには、一期一会。一度限りの少量生産。とは言えパンには変わりないわね」
私は目をキラめかせ。
「スゴいですね。まさに魂込めてますですね」
親方は謙遜する。
「いやあ、買いにわざわざ足を運んでくれる、お客さんに感謝だね」
「親方のクオリティが、量産パンになれば一杯の方々が、幸せになれると思うんですけど」
親方は愉快そうに。
「ハハハハハ……。気持ちだけ受け取って置くよ。私に導成釜は扱えない」
リデロさんが口を尖らせる。
「もし、学ぶとなると、お店を畳まないといけないくらい、勉強が必要だもの」
私は、親方のパンが一杯作れれば良いのに、と言葉を飲む。
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