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ハロウィンのようせい
みなさんは、10月31日がなんの日か、知っていますか?
――そう、ハロウィンです。
ハロウィンといえば、
おばけや魔女に、吸血鬼……こどももおとなも、いろいろなかっこうをして楽しむ、ちょっぴりとくべつな日。
これは、そんな楽しいハロウィンをひかえた、とある秋のものがたり――……
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
あるところに、まいちゃんという女の子がいました。
まいちゃんのお母さんは、しごとがいそがしくて、なかなか遊んでもらえません。
だから今日も、おうちのお庭でひとりで遊んでいました。
すると、お空がきらっとひかりました。
「あら?」
まいちゃんが目をこらすと、きらきらとひかるなにかが、空から落ちてきます。
まいちゃんは、近くまで行ってみました。
お庭でいちばん大きな木の下で、まっ赤なリボンをつけたようせいの女の子が、気をうしなっていました。
まいちゃんがその女の子をようせいだと思ったのは、せなかにすきとおった羽があったからです。
ようせいはまいちゃんよりも小さくて、まるでお人形さんのようでした。
「たいへん、けがしてる」
まいちゃんは、ようせいをおうちへ入れてあげて、きずの手当をしました。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
次の日、まいちゃんが目をさますと、ようせいも目をあけていました。
「気がついてよかった」
と、まいちゃんが言うと、ようせいはばんそうこうのはられた自分の手をみて言いました。
「助けてくれて、ありがとう。お礼に、ようせいの国にあんないしてあげるわ」
そして、まいちゃんの手をひくと、ようせいはまいちゃんをようせいの国へつれて行ってくれました。
「わぁ、きれい……!!」
まいちゃんは、思わずこえをあげました。
どこもかしこも、きらきらと銀色にかがやいていて、まるで雪でつくられた世界のようです。でも、ふしぎと寒くありません。
まいちゃんは、助けたようせいのおうちに、招待されました。
そのおうちは、なんと、お菓子でできていました。
「すごい、おいしそう……!!」
まいちゃんのことばに、ようせいはくすくすと笑いました。
「おうちを食べちゃだめよ。そんな悪い子は、おばけにいたずらされちゃうから」
おばけにいたずらなんて、されたくありません。
お菓子のおうちはとてもおいしそうだけれど、まいちゃんはぐっとがまんしました。
でも、そんながまんはすぐにしなくてよくなります。
助けたようせいの女の子が、ほかのようせいたちもよんで、まいちゃんにごちそうをしてくれました。
そのごちそうというのが、まいちゃんの大好きなお菓子だったのです。
ぜんぶちがう味のチョコレートに、カラフルなキャンディー。それに、いろいろなかたちのクッキーも。
おなかがいっぱいになったまいちゃんは、
「どうして空から落ちてきたの?」
と、聞きました。
ようせいは、
「下を見ようとしたら、落ちちゃったの」
と、答えました。
このようせいの国は、空の上にあるのでしょうか。雪に見えたものは、雲なのかもしれません。
「まいちゃん、帰らなくてだいじょうぶ?」
ようせいが、ふと心配そうに聞きました。
楽しかったきもちがいっきにしぼんで、まいちゃんは、しゅんとします。
「帰っても、お母さんに遊んでもらえないの。おしごとでいそがしいから……」
ようせいは、まいちゃんをなぐさめると、
「でも、お母さんが帰ってきたときに、まいちゃんがいなかったら、とても心配すると思うわ」
と、言いました。
まいちゃんは、お母さんを悲しませたくはありません。
おわかれするのはさびしいけれど、まいちゃんはおうちへ帰ることにしました。
ようせいは、
「また来てね」
と、まいちゃんに言いました。
そして、
「そうだわ。お礼に、この洋服をあげましょう」
と、言いました。
まいちゃんは、
「ありがとう」
と、お礼を言って、おうちへ帰りました。
✩.*˚✩.*˚✩.*˚
はっと気がつくと、まいちゃんはベッドの上でねていました。
ベッドの横には、お母さんがまいちゃんのために作っていた、ハロウィンのようせいの衣装がおいてありました。
~おしまい~
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