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1日目
――では、13時に渋谷のハチ公前で...
今どき、ありきたりな待ち合わせ場所だなと思った
と言ってもまあ、特に待ち合わせ場所にこだわる必要性なんてないのだが
約束の時間より10分ほど早く着くと、君は既にハチ公前で立っていた
「ごめん、待ったかな?」
「いえ、私も先ほど来たばかりですので...」
僕は、初めて見る彼女を舐めるように見る
やはり、加工の技術はすごいなと、感心した
俺たちはいわゆる、出会い系サイトで知り合った
"速水桃瀬、24歳、図書館パート勤務、盆栽が趣味、常に生まれ変わりたいと思っています..."
加工アプリか何かで顔写真は上手く加工されていたが、いざ会ってみると、想像通りの、眼鏡の地味っ子だった
顔自体は悪くは無いとは思うが
コンタクトにすれば、まあギリギリ合格点ぐらいにはなるだろうなと思った
「とりあえず、どっか店入ろっか」
「そ、そうですね...」
こりゃダメだ
明らかに、デートに慣れていない
俺も別に経験豊富という訳では無いが
俺が引っ張ってあげないと、地獄みたいな時間になってしまう
近くのカフェに入った俺たちは、テーブル席で向かい合って座った
「実家暮らし?」
「はい...」
「今まで彼氏出来たことは?」
「いえ、1度も...」
「何で出会い系やろうと思ったの?」
「な、なんとなく...です...」
いや、これは
俺が引っ張っても地獄かもしれない
話が全く弾まない
今回は、ハズレかな
その後の記憶は、ほとんどなかった
軽く映画を見たぐらいで、すぐに帰ったんだと思う
それくらい、彼女との初めてのデートは
何の波もなく終わった
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