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4日目
目が覚めると、既に朝を迎えていた
隣では、疲れ果てた彼女が、ぐっすりと眠っている
俺は少し外に出て、タバコを吸いながら、昨晩の余韻に浸っていた
―――最高だった
身体の相性は抜群
何回したかも覚えていない
"付けなくていいです..."と言った君の色っぽい表情を、俺は一生忘れられないだろう
「常に、生まれ変わりたいんです」
急に後ろから声をかけられ、俺は飛び跳ねるように後ろを振り向いた
そこには、彼女...
いや、この子は...
1日目だ
1日目に会った、眼鏡の地味っ子が、裸で立っていた
「なぜ、君が...?」
「なぜって、昨日私を抱いたじゃないですか。 忘れたなんて、言わせませんよ?」
確かに、抱いた
俺は"速水桃瀬"を抱いた
ただ、俺が昨日抱いたのは、この"速水桃瀬"
では無かった
この"速水桃瀬"は、1日目以来、会っていなかった
「いや、確かに抱いたが、俺が抱いたのは君ではなくて...」
「1つ、あなたに現実を教えてあげますよ」
「現実?」
「はい、現実です。 まず1つ、あなたと私は、今日で会うのは2回目です」
頭がこんがらがりそうだ
いや、それは確かにそうだ
"今の彼女"と会うのは、確かに2回目だ
そのはずだ...
「2つ、あなたが会った2日目、3日目の女性は、あれは全て存在しません。 夢です」
俺の思考は、完全に停止した
―――夢だと?
「あなたはおそらく、1日目の私を見た時に、ハズレだと思った。 だから自分の中で、理想の女性像を作り出し、その女性とデートをして一夜を過ごすという"夢"を見始めたんです」
彼女は無表情のまま、さらに続ける
「あなたは1日目の記憶なんて、ほとんど無いでしょうね。 つまらないと思ったから。 あなたはあの後、私をホテルに連れ込み、無理やり私を犯しました。 おそらく、自分の性欲を満たせれば相手は誰でもいいと、そういう考えだったんでしょうね。 避妊もせずに、無理やり自分の性欲を満たした後、あなたは疲れ果て、ぐっすりと眠った。 そして、さっきの夢を見た。 デートの時の食べ物がなんの味もしなかったのも、手を繋いだ時に繋いだ感触が無かったのも、全て、夢だから」
俺はもう、考えることを放棄していた
もう何も、頭に入ってこなかった
そんな俺に、彼女はゆっくりと近付いてきた
「幸せな夢だったでしょう。 美人な女性の隣を歩き、巨乳の女性を抱けた夢。 でもね、今は現実ですよ。 あなたは私を犯した。妊娠だってしてるかもしれませんね。今から私が訴えれば、あなたはどうなるんでしょうか? 現実って、辛いものですね。"女に恵まれた男の喜劇"から、"女を犯して捕まる男の悲劇"に変わってしまう」
立ち尽くす俺の体に、腕を回す
「ねえ、楠本さん?」
俺の耳元で、彼女は優しく囁いた
今でもその言葉は、ずっと耳に残っている
「この"喜劇のような悲劇"のシナリオを、あなたはどう終わらせますか...?」
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