思い立つ

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思い立つ

私は死にたかったわけではない。 ただ飛びたかったのだ。 今日は何だか、何かをしてみたくなった。 私だって、やれるんだ。 そう思って。 ご飯が食べられなくなって、 10キロ痩せた。 看護師をしている隣のご主人が、私を見かけて、 これはまずい、と思ったらしい。病院を紹介してくれた。 最近は薬が効いているのか、元気を取り戻してきた。 ご飯は半分食べるし、夜はうとうと出来る。 お腹痛い、心臓バクバクする、と思いながらも、ちゃんと外へ出られる。 子供は保育園に預けて、昼間は1人で泣き放題だ。 なのに、私は駄目なんだ。何にも出来てない! いや、出来るはずだ。  小さい頃から、親に、お前はしっかりしているから、と言われていた。 だから、ちゃんと、何か、出来るはずだ。 だから、やれると思ったんだ。 ここから飛べると…… 両足着地!両手をあげて、 「完璧」 2階へ行って、ベランダに電子ピアノの椅子を持って出た。 布団ばさみが窮屈なくらい、太さのあるベランダの淵。 椅子を使えば座るのは簡単だ。 足をぶらぶらさせて、景色を眺める。 なかなか気に入っている川沿いの桜並木。 遠くには菜の花の黄色がキラキラして見える。 心地よい。 誰も見ていない。 飛べ!かっこよく! ズリズリ…… ドシッッッ 飛べてない!落ちただけだ!かっこ悪い! 痛い!足が痛い! やだ…… どうしよう…… 体が震えてる……
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