かっこ悪い

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かっこ悪い

ベランダの下は庭の芝生。 その上に、左足を下にして落ちたようだ。 両足着地、出来なかった。かっこ悪い。 立ち上がれなくて、這って玄関ドアにたどり着いた。 誰にも見られていませんように…… かっこ悪い。 電話…… 電話……  リビングまで這って、震えのとまらない手で、 何とか病院に電話をかけた。 「もしもし。体、震えがとまらないんです」 「どうしました?何かありましたか?大丈夫?」 電話口の看護師さんが優しく話してくれる。 「2階の、ベランダから、飛んじゃった」 「そうなのね。大丈夫?今、先生と代わりますね」 すぐに、先生の声が飛び込んできた。 「もしもし!どこか怪我はない?心配ないから、落ち着いて話して」 「足が痛くて歩けない…… 体が震えて……」 「まずは怪我が心配だから、病院に行こう。整形外科。 行けるかな?近くにある?」 「あります。自分で行きます」 「大丈夫?心配だな。行けるかな」 「はい」 「そこで診てもらって、その後ここにおいで。タクシー使うんだよ。待ってるからね」 「はい」 いつも優しい先生。びっくりしているようだった。 そうだよな。飛んじゃったんだから。 私は冷静になりつつある。 幸い、怪我をしたのは左足だから、オートマは運転できる。 車で2分、歩いてもすぐのところに整形外科がある。 あ、歩いてはいけないんだった。 タクシーは高いから、もったいない。 車でいこうっと。 私は、座ってズリズリ動いたり、片足けんけんで壁に掴まったりしながら、なんとか車に乗り込んだ。
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