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「ほら、お父さんも何か言ったら?」  ソファでぶすっとした表情のままテレビを見る父は、母に声を掛けられても何も言わない。ただテレビで流れているニュースを聞いていた。いや、聞いているように見えて本当は聞いていないのだろう。明らかに目の焦点がテレビと合っていない。 「ごめんなさいね、この人美咲が彼氏連れてくるって言った瞬間、この調子で」 「いえ、大切な娘さんですから当然です」  学はそう言うと、父の方に向かって歩きだす。私は「学?」と言って近くに駆け寄ると、正座をする学を見た。 「お義父さん、初めまして。美咲さんとお付き合いさせていただいております、栗田学と申します。娘さんを僕にくださいッ」 「まぁ、直球!」  母は後ろで少女漫画を読んでいるような少女の顔をしており、頬を赤らめながら興奮していた。私の肩をバシバシと叩いており、一人で騒いでいる。私は「痛いから」と言うと、母がハッとなって謝る。だが父は何も言わず、ただじっと座っていた。 「お父さん、聞いてる? いい加減その態度どうにかしたら? 感じ悪い」  私ははっきり言うと、父がやっとこちらを見た。ぶすっとした父は私を見るなり、鼻を鳴らすと立ち上がる。 「」 「何、昭和の父親みたいなこと言ってるの? 今は令和なんだよ」 「昭和生まれだから昭和の父親みたいなことしか言えないんだよ」  父ははっきりとそう言うと、母が苦笑いを浮かべた。 「とにかく結婚は認めん」 「ちょっとお父さん」  すかさず隣にいた母は口を挟むと、「私は良いと思うわよ」と父に言った。だが母の意見など聞く耳持たず、父はぶすっとしたままである。 「……こういう時だけ馬鹿みたい」
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