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 私はぽつりと呟くと、ハッとなる。父は驚いたように目を見開いており、母も唖然とした表情を浮かべていた。後ろで学は悪化していく私たちの家族仲にハラハラとしてしまっている。  ストンと言葉が落ちてしまったせいか、ボロボロと今まで思っていた言葉が紡がれて、私の口から放たれた。 「私のことなんて見てなかったくせに。何よ、急に父親ぶって。家にも夜遅くまで帰ってこず、ずっと仕事、仕事。そんな人が口出しするなッ!」  私は今まで溜まりに溜まっていたヘイトを父にぶつけると、父が立ち上がり、私の頬に鋭い痛みが走った。 「お父さんッ!」  母はすかさず父に飛び掛かると、父が私をギロッと睨んでいる。母の力じゃ到底父には敵わず、ただあたふたとするしかなかった。私も父をギロッと睨み返すと、「何それ……」と呟いた。 「最っ低……」  私はリビングから逃げ出すと、階段を上って自分の部屋へと向かった。後ろから「美咲!」という学の声が聞こえたが、無視する。バタンと大きな音を立てて部屋に閉じこもると、布団にくるまった。頬はまだひりひりと痛む。  すぐにドアがノックされ、私は涙を零しながら返事をせずに無視すると「美咲、入るよ」という学の声が聞こえてくる。学はそっと私の部屋に入ると、すぐに布団にくるまる私の傍へとやって来た。 「美咲」  学は優しい声で呼ぶと、私は布団から顔を見せ、学の胸に飛び込む。学はしっかりと私を受け止めてくれると、優しく背中を擦ってくれた。 「うっ……うっ……」  しばらく涙を流していると、学が「大丈夫、大丈夫」と優しい声色で声を掛け続けてくれて、落ち着いてくる。私は学から離れると、真っ赤になった目の周りを手で拭った。拭え切れなかった箇所を学が拭ってくれると、優しい笑みが降りかかる。
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