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「僕、諦めないよ。お義父さんが認めてくれるまで、美咲との結婚諦めない。美咲には僕の花嫁になってほしいし。美咲とお義父さんの関係があまり良くないのは知ってる。でも一緒に来てくれる?」  学はそう言うと、私に向かって手を伸ばす。その大きな掌に私はしばらく見入ると、手を掴んだ。くるまっていた布団を剥ぎ、ベッドから降りると部屋から出る。一階へと降り、混乱と不安がぐちゃぐちゃになった空気に飛び込むと、母が私の姿を見るなりホッとしたような表情を浮かべた。 「美咲……!」  母は私に駆け寄ると、真っ赤な瞳を見てすぐに冷凍庫からタオルにくるまった氷を持ってきてくれる。私はそれを受け取ると、目には当てずただ手に持った。それからソファでぶすっとした表情を浮かべる父の前へ行く。 「私はお父さんが好きじゃない」  私ははっきりそう言うと、驚いた学が「ちょっ、美咲……」と小声で言う。だがそれを無視して、私は父の瞳の前に来るとしっかりと見た。 「でも嫌いな訳じゃない。だって、お父さん家にほとんどいなかったから。好きになる理由も無ければ、。だから普通。まぁ、ビンタされた時はまじで嫌いになりかけたけど。でも私はそんな(やわ)じゃない」  父はギロッと瞳を動かして私をちゃんと見ると、ぶすっとした表情のままじっと見た。 「学は私が出会った中で最高の人なの。この人しかいないの。優しくて、明るくて、頼りない部分もあるけど、それはそれで良いじゃない。二人で乗り越えれば良い。とにかく学は私にとって最高の相方なの。だからお願い。結婚を許してください」  私はそう言ってお辞儀をすると、後ろで学もお辞儀をした。すっかり学が出る幕も無く、私たちは言葉を完結させると父の「」という声が聞こえてくる。私たちは顔を上げると、父のぶすっとした表情が私たちを見ていた。
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