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――蒼玄様。本当は私、みんなとずっと一緒に居たかったです。
叶えられる事の無かった心の奥底の願いを、思い浮かべてみた。
でも、それはあくまでも私の我儘。みんなにはそれぞれ、還るべき場所があるのだ。それを壊してはいけないと思っていた。だから、その願いは言ってはいけない、と。
「ニ”ニ”ニ”」
いつの間にか私の傍に、小さなミケ猫がすり寄って来た。かんな、って言ってくれているみたいだ。さっきは愛想悪かったのに、缶詰をお供えしたのが良かったのかな。
ミケ猫を抱き上げた途端、ふわっと懐かしい風が吹いた。
優しい風が吹いたのかと思った途端、一陣の強い旋風が辺りを襲ったので思わず目を閉じ、ミケ猫を守るように抱きしめた。
すぐに風は止み、温かな空気へと変わった。まだ蕾だった山桜が一斉に花を咲かせ、辺りを美しいピンクに染め上げた。満開の桜の花吹雪が舞う中、金色の優しい光が、天から一筋零れ落ちてきた。
無数の金色の球は、やがて人の形を司(つかさど)っていく。
優しい風と花びらが舞う中、愛しいひとの姿が目の前に――
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