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「神奈」
薄く紅を引いたように美しい唇が私の名を呼び、形にする。
「天人!!」
私の大声に驚いたミケ猫が、ぴょん、と器用に私の腕の中から飛び降りた。自由になった私はわき目もふらずに走り、目の前に現れた彼の胸に飛び込んだ。
「何で・・・・どうして・・・・。これは夢なの?」
涙がまるで滝のように頬を流れ落ちていく。溢れて前の見えない私の瞳から、天人はそっと涙を拭ってくれた。
「神奈のお陰で、神の頂点極めた。落ちこぼれだった俺が、短期間で神の中の神――キングオブ神になったんだぜ。でもオヤジにさ、恩人の願いも叶えられずに何がキングオブ神だ、って怒鳴られちゃって。天上界追放された」
「つ・・・・いほう」
「こんなつまんねートコ、こっちから願い下げだ、って、キングオブ神辞めて、人間界に来た!」
「噓・・・・」
「嘘じゃねえよ。神奈、お前に会いに戻ってきた。もう、何処にも行かねえ。ずっと、お前の傍にいる」
「嘘だぁっ・・・・」
「そんなに噓にしてえのか?」
「だって・・・・! だって天人は神様だからっ。天上界にっ・・・・必要でしょ。だから、だから一緒にいるのは諦めたのに・・・・ううっ・・・・」
矢次に信じられない事を言われて、脳内キャパシティを超越してしまい、パニックになった。嗚咽が止まらない。
「もう、だから姿を見せる時は気を付けなさい、って忠告しておいたのに。神奈をこんなに泣かすなんて、サイテーね」
ミケの声だ!
私は顔を上げてキョロキョロしたら、目つきの悪い小さなミケ猫と目が合った。「お久しぶり」
「うそっ! 貴女、ミケなの!?」
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