プロローグ

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プロローグ

 覚えているのは……  耳をふさぎたくなるほどうるさかった蝉の鳴き声がまったく聞こえなくなったこと。  それは……  彼が目にかかる前髪をかきあげ、すべらかな額があらわにしたとき。  最初はなんだか怖かった、切れ長のセピア色の瞳が微笑みを浮かべると優しい光をたたえるとわかったとき。  わたしの心はすべて、彼だけで埋め尽くされた。  そして気づいた。  わたしは、この人に会うために生まれてきたんだと。    
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