出会い 

3/18
前へ
/50ページ
次へ
 都心から電車で20分あまりの住宅地にその家はあった。  似かよった分譲住宅が並ぶ坂道をのぼりきると、突き当りに突然、雑木林があらわれる。  はじめて訪れた人はみな感嘆の声をあげる。   東京の住宅地の一角に、避暑地さながらの風景が忽然(こつぜん)とあらわれるのだから無理もない。  雑木林の奥はブロック塀で仕切られ、その先は崖だった。  そのため、木々の間からは空しか見えない。  その雑木林のとば口に平屋建ての家が一軒建っている。  扉も、壁も、窓の桟も白一色。  屋根は深緑色。  玄関脇の壁には蔦がからまっている。  まるで外国映画に出てくるような雰囲気の家だった。  夏瑛は、はずんだ息を整えてながら呼び鈴を押す。  家から15分余り。自転車でここまでやってきた。    
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

384人が本棚に入れています
本棚に追加