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「はーい」
奥から叔母の返事が聞こえた。
「あら夏瑛ちゃん、いらっしゃい。暑かったでしょう。サイダー飲む?」
外の暑さとは無縁といった涼しげな風情で、叔母は薄暗い部屋の奥から出てきた。
「うん、飲む」
夏瑛は、サイダーが好きだ。
飲むのも好きだが、表面についた無数の泡が耐えきれなくなって立ちのぼっていくさまを眺めるのも好きだった。
まるで透明の細かいビーズのようでつなげてみたくなる。
だから、いつもなかなか飲まずに泡に見入ってしまう。
「早く飲まないと、気が抜けちゃうわよ」
そんな夏瑛の様子を見て、叔母は優しく微笑む。
「泡、きれいだから、飲むの、もったいなくて」
「夏瑛ちゃんはすてきな感性をしているわね」
そう言って夏瑛の頭を撫でてくれた。
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