m'03

2/3
前へ
/113ページ
次へ
キンキンに冷えたジョッキとお通しの板わさが届くと、隣に座る彼も飲んでる途中のビールを持ち上げる。 「乾杯しましょ。」 「何にですか?」 「思いがけない再会です。」 今度は満面の笑みだ。目元が三日月みたい。綺麗な顔立ちだから、攻撃力がすごい。なんというか…素直な子なんだろうな、きっと。 ジョッキ同士を軽く合わせて、泡を気にせず一気に飲んだ。 「ヤマちゃんさん、昨日はほんとにすみませんでした。なんか舞い上がって、ひとり大騒ぎして。あの後、ヒロさんにすごい説教くらって…。」 「…お酒の場ですからね。ご自身が楽しめればいいんじゃないですか。でも、周りを見ながら節度を持てると、もっと楽しいかもしれませんね。」 「反省してます。…反省してたから、今日会えたのかな?もう、しばらくヒロさんとこには来ないだろうし、一生会えないかと思ってた。」 一生って。確かに人は多いけれど、さして広くないこの街で?私も彼も行動範囲や動向が被っていそうだから、そのうちまた顔を合わせていた可能性は高いだろうに…、と思いながら口には出さず、代わりにビールを運んだ。 「今日は雰囲気違いますね。」 「休みです。この前と昨日は仕事帰りだったので。」 「あ、お仕事…。」 「土日休みの会社員ですよ。」 「…教えてくれるんですね。」 「反省、していそうだから。」 「今日の俺は大丈夫ですか?」 「や、昨日だって別に…。ごめんなさい、昨日は私も失礼でした。大人げなかったです。」 これは本当。別に彼の態度に物凄い失礼があったわけじゃない。あの勢いで距離を縮めて上手くいくことだってあるんだろう。 昨日の私に受け流すキャパシティがなかっただけで、彼だけが悪いわけじゃない。
/113ページ

最初のコメントを投稿しよう!

372人が本棚に入れています
本棚に追加