m'04

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「いつにします?」 都合のいい日を聞かれると、なんでだろう、直ぐに答えられない。別に誰かと約束してる日がある訳でもないし、出張がある仕事をしているんでもない。 いつでもいい、と言えばいいんだけど…。気乗りしないのは私の方だ。仕事絡み以外で新しく人と知り合う、なんてここ数年無い。 「ヤマちゃんさん?」 「あ、ごめんなさい。予定思い出してました。金曜日なら19時には行けると思います。」 「金曜日ですね。今週は早番なんで、僕も行けるかな。」 「え〜、楽しみ〜…。」 あ、またとろける笑顔。やたら眩しく見える。彼と同世代の女の子だったら、ひと目で恋に落ちるんだろうな。やっぱり若者怖ーい。 「ヤマちゃんとユウ、連絡先交換しておけば?」 「そうですね、堂本さんが差し支えなければ。」 「え、いいんですか!?」 「その方が便利ですよね?」 急な残業になったら困るし、なんてまだ逃げ道を探してる自分が嫌だなぁ、と思いながら、バッグからスマホを取り出し、メッセージアプリを立ち上げる。 連絡先の交換なんてしなくなって久しい。交換の仕方に戸惑ってたら、堂本がスマートにやってくれた。 いちいち年齢差を感じてしまうのは、自分が歳をとった証拠?いやいや、歳を重ねた、って思わなきゃやってられない。 「山際…都さん?」 「はい?」 あぁ、アプリのユーザー名、フルネームにしてたのか。ま、ここまできたら、そこまで頑なに隠すことでもない。 「都さんって呼んでも良いですか…?」 時折、こちらを伺うような震える目で見てくることがある。二回目に会った時のことを反省して、距離感を探っているんだろう。多分、良い子だ。こっちからも少し歩み寄ってみよう。 「どうぞ。私も、堂本くんって、呼ばせてもらいます。」
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