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「ヒロさん、すみません。用事を思い出したので、今日はこれで失礼します。せっかく作っていただいてる食事、良かったら堂本さんに召し上がって頂いて。お会計、お願いします。」
「ちょ、ちょっと待ってヤマちゃん!ごめんね、ユウが煩かったよね!ほんと申し訳ない!」
キッチンから慌てて出てきたヒロさんが、顔の前で両手を合わせて私に謝ってくる。
「いえいえ、そういうんじゃないので…お願いできます?」
「や、今日はいいです。俺の奢り。ってゆーか、ユウにつける。」
「ううん、ちゃんとお支払いしないと、次、来づらいですから。」
「ほんとに次、来てくれる?これでヤマちゃん、来なくなったら困るな〜…。あ、もし良かったら俺の連絡先渡しておく。来る前にメッセージくれたら、ユウがいるかいないか報せるよ。」
「おい!なんでどさくさに紛れて連絡先交換しようとしてんだよ!」
叫んでいる堂本を無視して、ヒロさんは私を店の外まで送り出してくれた。
「なんかほんと、ごめん。ユウ、今まであーゆーことなかったから、ふたりにしちゃって…。」
「いえ、私も大人げなかったですよね。反省してます。またの機会にお邪魔しますね。」
「あ、連絡先、いる?」
「いえ、それより、結局ごちそうになってすみません。しばらくしたらまた来ます。」
「はは、断られちゃった。ユウのこと言えないね、俺も反省。またお待ちしてます。」
「今日もごちそうさまでした。」
軽く頭を下げて、店を離れて歩き出す。どうしよう、他の店で飲み直すか…でもなんだか疲れちゃったな。疲労の上に疲労が重なった。
今日は真っ直ぐ家に帰って、また明日にでも飲みに出よう。
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