m'03

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m'03

ヒロさんのところには、ワインの気分の時に必ずと言っていい程遊びに行っていた。 素敵なお店だったのに、しばらく行けないかな…。もうちょっと穏やかに収めるべきだった。 まぁ、この街にはおひとり様女子を快く迎えてくれるお店はまだある。新規開拓も楽しいかもしれない。今までもお邪魔していたお店に通いつつ、リサーチしてみよう。 翌日、いつもの週末のように寝坊して、ゆっくり家事を片付けたら、私だけの自由な時間だ。昨晩のリベンジに向かおう。 居酒屋っぽいところにしようかな。仕事ではないし、誰に会うでもないから軽い化粧を施してラフな服装で家を出た。 レモンサワーが美味しいお蕎麦屋さんに決め、平日とはまた違った雰囲気の街を歩く。 今日行くお店も、何回か訪ねたことがあるお気に入り。フワフワな卵焼きとサクサクの天麩羅でお酒を飲んで、お蕎麦で締めよう。美味しい妄想を頭の中で繰り広げながら引き戸を開けて、挨拶をしながら店を見渡すと、知った顔があった。 「こんばんはー。…あ。」 「え。」 カウンターにいたのは堂本。今一番会いたくないと思っていたけれど、もうお店の人とも彼とも目が合ってしまっている以上帰り辛い。 今日も昨日と同じようにビール一杯で退散コースかー、なんて入口で佇んでいると、カウンターに一人座っている彼におずおずと声をかけられた。 「あの、ヤマちゃん、さん。良かったら、隣来ません?あんまりいい印象ないと思うんですけど、出来れば謝りたくて。」 昨日のテンションはどこへやら。落ち着いた声、というか、沈んだ声?また違う表情だ。昨日の勢いがなければ、まぁビール一杯分ぐらいの時間は付き合えるか、と思い直して、誘われるままに隣に座った。 「こんばんは、昨日ぶりです。」 「うわ、座ってくれた。嬉しいです。」 声のトーンと口の端を上げる彼を見て、心の声を前言撤回すべきかどうか悩みながら、カウンターの奥にいるご主人に声をかけた。 「すみません、とりあえず、生を下さい。」
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