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定時に職場を出てcocoonに着くと、まぁまぁ賑わっていた。ここのところ、夜中にしか来てなかったから違う店に来たみたいだ。
この時間に来るのはどれくらいぶりだろう。半月ぶり…か?思い返すと、自然に彼女に最後に会った日のことが頭に浮かんで、苦い気持ちになる。
まだ佐藤は来ていないようだ。別に待ち合わせをしたわけではないから、と一人で先にビールを飲み始めた。
佐藤って、何年生の時に同じクラスだったんだっけなぁ…同窓会、来てたっけ?
久しぶりに再会する同級生について考えていると、店のドアが開く音がした。
「こんばんはー…あ。」
「ヤマちゃん、いらっしゃい。」
店の入り口に、夢にも出てきてくれなかった彼女がいる。いや、ここのところうまく眠りにつけなかったから、夢なんて見てないんだけど。
「堂本くん…。久しぶり。」
「…お久しぶりです。」
彼女が、俺の隣に座った。
もう、ここで会うのは何回目になるのか、数えるのをやめてからどのくらいになるだろう。
声を聞くだけで、香りを嗅ぐだけで、気持ちが昂る。これ以上誘惑しないでくれ。手を伸ばせば届く距離にいるのに、それを辛抱しろなんて、拷問だ。
「あ、大丈夫ですよ。俺、帰るところだったんで。ゆっくりしていってください。」
「待って、堂本くん。」
俺は、我慢できる男じゃない。前科がそれを物語っているのは、あなたも知っているはずだ。
「あの、急いでる?急いでなかったら、付き合ってくれない?私、今日ちょっといいことあって。少し良いワイン開けたいなぁ、と思ってるから、良かったら、一緒に…。」
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