死神が私を呼んでいる

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―――え・・・? 確かに鉢植えは愛優に直撃するコースで落ちてきていた。 もし外れたとしても鉢植えは地面に叩き付けられ粉々になっていただろう。 しかし現実はその白い服の男が軽々と片手でキャッチしていたのだ。 「あの・・・」 「大丈夫?」 「ッ・・・!」 だが彼をよく見たところでギョッとした。 白の男性の頭の上には輪っかが付いており、背中には白くて大きな翼まで生えていたのだ。 それだけでも驚愕なのに、その顔を見たところで言葉を失ってしまった。 ―――嘘・・・。 ―――貴成くんが今度は天使に? 全て自分の弱い心が見せた幻。 そんな風には思えない程、死神も天使もハッキリとしていて、存在感があった。 二人の貴成を見ていると次第に愛優は怖くなって思わず後退ってしまう。 「あぁ、安心して。 俺は愛優のことを恨んでいないよ」 「う、嘘だ・・・ッ!」 「本当だって」 「だってさっきから車に轢かれそうになったり、鉢植えが頭に落ちてきたりして私は死ぬ寸前だった!!」 そう言うと天使の貴成は死神の貴成を見据えて言った。 「ほら。 お前のせいで愛優は混乱しているじゃないか」 「俺は何もしていないぞ」 二人が会話しているのを困惑したまま聞いていると、天使の貴成が愛優に向かって言った。 「俺とあの死神は、愛優の精神状態によって生み出されたものだよ」 「・・・え?」 「この三年間、ずっと葛藤していたんでしょ? こんな私は生きていてはいけない、幸せになってはいけない、って」 「・・・」 確かに三年間ずっと葛藤していた。 「俺は愛優を天国へと連れていきたくない」 「・・・でも」 「愛優が死んで俺は幸せになると思う? 愛優には生きてほしいから、あの時愛優を庇ったんだよ?」 「ッ・・・」 「愛優にはどうか幸せに生きてほしい」 そう言ってジッと見つめてくる貴成を愛優もじっと見つめた。 ―――・・・そうだ。 ―――ここで私が死を選んだら、あの時助けてくれた意味がなくなってしまう。 「・・・私はまだ生きていてもいいの? 幸せになってもいいの?」 尋ねると貴成は優しい表情で頷いた。 「もちろんだよ。 それが俺の一番の願いさ」 その言葉に今度は愛優が頷いた。 「よかった。 これからも愛優を見守らせてね」 天使の貴成は嬉しそうに笑い姿を消した。 「・・・全く。 愛優は責任感が強い人だとは思っていたけど、ここまでだったとはな」 「・・・え?」 残された死神は頭を掻きながら言う。 「まぁ俺は、愛優のそういうところに惹かれたんだけどな」 そう言うと続けて死神も安心するように小さく笑い静かに消えていった。 ―――・・・貴成くんは私が生きる道を与えてくれた。 ―――それを無にしてはいけない。 ―――せめて恩を返せるように、私は今を精一杯に生きなきゃ。 ―――ありがとう、貴成くん。 ―――私目一杯頑張るから、見ていてね。 愛優は過去の縛りから解き放たれ大きく人生を歩んでいくのだった。                              -END-
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