chocolate 02 行き場を失くしたソレ

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「なっ、なんでっ……!?」 「図星か」 驚いて持っていた食器を落としそうになった私に、片方の口角だけを上げた顔が得意げな笑みを浮かべる。 「だってお前、昨日は『彼氏と会う』って言ってたのに、こんな物バッグに入れたままだし」 驚く私の視界に入ってきたのは、見覚えのあるラッピングボックス。 「そういえば、昨日はバレンタインだったな」 慌てて篠原のもとに駆け寄って、それを奪い返そうとしたけれど──。 「勝手に見ないでください!」 彼は椅子から立ち上がってヒラリと躱し、私を見下ろしながら口元を緩めた。 「別に勝手に見たわけじゃない。こいつの方から、俺の視界に入ってきたんだよ」 「どんな言い訳ですか!」 篠原はいつものような高圧的な態度とは違い、どこか楽しそうにニヤニヤと笑っている。 「へぇ、お前が手作りねー」 バカにされたのだとわかってムカつきながらも、彼を相手にしては敵わないことは重々理解している。私は眉を寄せてため息をついたあと、手を引っ込めた。 「……それが欲しいなら差し上げますから、さっさと原稿を書いてください」 そのボックスも中身も、どうせ行き場を失くしてしまったのだ……。 今更、どちらも必要ない。
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