chocolate 02 行き場を失くしたソレ

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私は篠原の言葉に目を見開きながらも、無意識のうちに後退り続けていて──。 「きゃっ……⁉︎」 不意に足に当たったソファーに躓いて、そのまま体が後ろに倒れていった。 その最中で、意味深な笑みと落ちてくる生チョコを視界に捉える。 そこでようやく、彼によってここに追い詰められていたのだということに気づいた。 倒れ込む寸前のところで私の後頭部に手を添えた篠原のおかげで、辛うじて頭を打つことからは免れたけれど……。彼に組み敷かれた状態なんだとすぐに把握し、いっそのこと頭を打った方が安全だったのではないかと思った。 状況を把握した途端、心臓がバクバクと鳴り始める。 「あ……のっ、ど、どいてください……」 それを必死に隠して告げた私に反して、篠原はあくまで自分のペースを崩さない。 「あ〜ぁ、全部落ちたじゃないか。勿体ないな……」 恐らく、ソファーの周りにも散乱しているであろう生チョコは、私の体の上にも乗っているんだろう。 「……お前のシャツも汚れてる」 篠原は小さく呟きながら後頭部に差し込んでいた手を抜き、私のシャツの上に落ちていた生チョコを拾った。 形の悪いそれが、彼の口の中にゆっくりと消えていく。
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