chocolate 01 脇役にしかなれない女

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篠原自身への憧れは消えてしまっても、彼の書く作品の魅力には取りつかれたままで、そのすべてを読み込んだ。 だけど……。 篠原の作品の中に、私のような主人公はひとりもいない。 可愛くもなく、可愛いげもない。 そんな私に与えられるのは、せいぜい主人公を引き立てるための脇役くらいだろう。 それもほとんど出番のない、ほんのワンシーンを飾るだけの脇役の中の脇役。 きっと〝つまらない女〟である私には、そのくらいの役がお似合いに違いない。 幼稚園の演劇会では、たしか“りんごの木”の役だった。 人間ですらなくて、もちろん台詞もなかったけれど……。当時の私にはまだ悩みなんかなくて、出演シーンが多いというだけで誇らしさすら感じていたような気がする。 小学二年生の時の学芸会では、村人Cの役だった。 村人Aですらなくて、台詞はたったのひと言だけだったのに……。幼稚園の時とは違って台詞をもらえたことが、少しだけ嬉しかった。 中学三年生の文化祭では、くじ引きで小道具になった。 もはや、舞台にすら立てなかったけれど、その頃にはもう役をもらいたいなんて思っていなくて、ホッとしていたような気がする。 (脇役にしかなれないって思ったけど、その頃にはもう、舞台上の脇役ですらなかったってことよね……)
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