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視線がぶつかる。
満身創痍の男と趣味の悪い服装の男。
お互いの目に映る自分を睨んだ。
「あんたは確かに尾上さんに惚れてる。でも若い男が好きなあの人には言えなかったんだ」
「やめなよ万丈クゥン。俺を怒らせたらどうなるか解ってるだろ?」
「あんたは自分の汚いケツを尾上さんに向けて腰を振っておねだりしたがってたんだ。でも怖くて意気地がなくて出来なかったんだろう。」
「よしなさいってば」
笠松の顔から笑いが消えた。
万丈は痣や血や反吐で汚れた顔で無理矢理笑い、勝ち誇った声音を上げる。
「笠松さん、俺は尾上さんを抱いた。犬みたいに後ろから組み敷いて犯した。硬いケツを両手で割って誰も使った事のない糞の穴に俺の物を入れた。初物だったからケツの中が切れて煎餅布団が一組駄目になりましたよ。あの人の乳首を千切れる位に摘まんでやったらどうなったか知ってますか。カチカチに固くなってそれだけでザーメンを撒き散らした。あの人のエロ顔はまるで女だ」
「万丈…やめろ」
呻く、笠松。
悲しみが深く深く万丈の襟首を握る拳から伝わってくる。
「やめる?どうして。こんな気持ち悪い話は尾上さんだって良くしていたでしょう。惚れてないんなら平気じゃないですか。どうせ俺はあなたに殺されるんだ。多少のノロケ話をしたって罰はあたりはしない。それとも聞くのがつらいんですかあんたを友達と思っていた尾上さんを裏切った癖に」
あんたは。 と恩人に向かってツバを吐き捨て、万丈は嘲り、笑った。
「あんたはいつまで経っても一人ぼっちのスラッガーだ。幾ら強くても誰も誉めてくれないし、弱くもなる度胸もない。マウンドを降りる勇気もないから強くなるしかない。そんなあんたはいつまでもいつまでも一人でゲームをして、勝って。死ぬまで一人ぼっちでブツブツ言ってオナニーでもしていればいい」
「万丈おおお!」
響き渡る遠吠えに合わせて腹に拳の圧力がやってきた。万丈は腹にとびっきりの打撃を食らって吹っ飛んだ。 【万丈食料品店】と書かれた軽トラの荷台の横にぶち当たり、崩れ落ちるが何を思ったのか車体の下に潜り込む。
猫のようだ、と息切れをする喉の辛さに顔をしかめながら笠松は思った。
息を切らした自分を恥じながら笠松は一呼吸、体勢を立て直すように息を吐く。
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