わるいこシリーズ③【スラッガー】

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悪い事も 良い事も それをしたのは私 そうしたかったのは私 それに後悔なんてするのはおかしい事 俺は尾上さんが欲しかった それを 良い事 悪い事 いまさら 言わない事が幸せになれるコツ 間違えようが 何をしようが それは自分の招いた事 「俺は夢を見たいんだ。笠松さん、俺はあの人がいるだけで強くなれる。どこまでも力がみなぎってくる」 万丈はバットのグリップを握った。 …アンバランスが丁度いい アンサンブルは聞こえない アンブレラはもういらない アンケートは必要ない いらない いらない なにもいらない 自分があれば問題ない だけど アイシテルはもう少し 愛に変わるのはもう少し 後は あなたがいれば それだけあれば 私はもっと強くなれる 成長がある 若さがある 愛がある そこが私のいい所 それが万丈のいい所 それこそが俺のいい所 「万丈、お前…」 笠松の笑いが歪んだ瞬間に腰を落として、万丈がバットを力の限り振るったらカキーン、笠松のベルトの鉄の部分に当たって良い音がした。 荷台からぶっ飛んで行った玉はアスファルトに転がって少し呻いた後、ずるいじゃないか。俺にもいい夢見せてくれよと言ったので、尾上さんバージンですよ。言ったら、馬鹿だなあと小さな声で笑われた。 それから 「行けば?俺はちょっと寝るから。」 それっきり 万丈に背を向けたまま 笠松は喋らなかった。 …いつかの昼間、万丈が恋に落ちる数時間前の笠松と万丈は一緒に飯を食べていた。 「どう、尾上の下は」 「まあ…やる事はめちゃくちゃですけどね。でも筋が通ってるんで何にも言えないって言うか。なんだか憎めないキャラですねあの人。」 「ガキだからねー。我慢我慢。でも尾上は誉めてたよ。良い奴を貸してくれたって喜んでた」 「本当ですか?なにも言われてやしませんが」 「あいつ、素直だからお世辞は言えないよ。」 「素直と言うか、大人気ないと…ちょっと待って下さい。携帯、携帯…あ。噂をすれば」 「尾上クン? やだね、あいつ盗聴器でも仕掛けてんじゃないの」 「まさか。野生の勘じゃないんですか?ちょっと失礼。もしもし」 もしもし、はい万丈です。 【スラッガー】
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